アジア唯一の下肢静脈瘤「グルー治療」が、医療ツーリズムを加速させる:東京血管外科クリニック

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2016.12.26 Mon.  田中祐子

東京・文京区にある東京血管外科クリニックは、下肢静脈瘤の最新治療法「スーパーグルー治療」の提供を通して、中国や韓国をはじめとするアジア圏を中心とした医療ツーリズム患者の受け入れを本格的に開始した。

血管内を焼かない治療だから血栓ができにくい

「下肢静脈瘤は、足の静脈の逆流防止弁が壊れて正常に機能しなくなることで血液の逆流が起こり、逆流した血液により血管が徐々に拡張されコブ(瘤)のようにふくらんだ状態になり外見上でもわかる病気。推定患者数は1千万人ともいわれ、身近に起きやすい病気の一つ」(東京血管外科クリニックHPより)

妊娠、出産が原因となり、40代以上の女性に多いともいわれている下肢静脈瘤。軽度の場合は特に生活に支障もなく、それが病気であるということも認識しないまま生活している方も多い。受診をする人たちの症状にも、足がつる、疲れやすい、ムズムズ感やかゆみがあるといった軽度の場合もあるが、その一方で慢性的に潰瘍ができる、足の静脈がこぶのよう大きく浮き出ている、軽い打撲でも出血する恐怖があるなど、重い症状のために生活すらままならなくなることもある。

「スーパーグルー治療」登場以前の主な治療法は
1)弾性ストッキングの装着による保存的処置
2)硬化療法(原因静脈に硬化剤を注入)
3)ストリッピング手術(原因静脈を抜き取る)
4)血管内治療(カテーテルを静脈内に入れ、高周波やレーザーを用いて焼く)
というもの。

これらの中で、現在多くの患者に選択されているのが血管内治療。根治につながり、ストリッピングなどの侵襲性のより高い外科的処置に比べて負担が少ない、また一部をのぞいて保険適用されるという点がその選択の理由だった。

だが、今回東京血管外科クリニックが提供する「スーパーグルー治療」は従来の治療のさらに上をいくメリットがあるというのだ。それが、血管を焼かない、つまり血管内が高温になる状態を作らないことにより、血栓の出現を限りなくゼロにしたというもの。

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スーパーグルー治療は、シアノアクリレート(ヒストアクリル)という安全性の高い特別なグルー(ポリマー)を用いて治療対象の血管を瞬時に塞ぐ。シアノアクリレートは、脳血管の手術や胃の静脈瘤の塞栓療法に使われているものと同成分で、すでに日本でも安全性が確立し、各分野への応用が期待されている最新の成分だ。

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エコーで状態を確認しながら、グルーを血管内に注入する

スーパーグルー治療は、現在日本では医療承認は受けていないが、アメリカでは2年前から、ヨーローパでは5年前から医療承認済みだ。2015年11月5日にアメリカ・ロスのアナハイムにて行われた米国静脈学会において、過去2年間の治療データが発表され、レーザー治療と比較しても遜色なく、かつより高い実績が認められた。これを受け、今後は従来のレーザー治療からグルー治療に切り替わっていくことを確信した同クリニックは、次世代の最新治療としてグルー治療の本格的導入を決めたという。その後、順天堂大学の榊原直樹先生がアメリカ・タンパで行われたエキスパート指導医による技術指導研修と使用器具メーカー協力によるトレーニングを終えて帰国し、2016年5月より同クリニックにおいて治療が開始された。現在、年間50件ほどのグルー治療が行われているという。

グルー治療がメディカルツーリズムの目玉となりうるワケ

グルー治療は、従来の治療に比べると確かに痛みが少ない、術後の腫れがないなどのいくつかの大きなメリットはある。ただし、レーザー治療は保険が適用されるため、3割負担で約5万円、1割負担で約1万5000円で治療を受けることができるのに対して、グルー治療は保険適用外で約50万円ほどかかるのだ。それでも導入以来、治療法として選ばれ、実績を伸ばしている理由は何か。

同クリニック患者さま支援室・原看護師長はいう。

「患者さまの多くはアジア諸国、主に中国からの方です。こういった方はそもそも保険適用がされない。そして、最新の治療を選択される傾向にあります。とはいえ、何と言ってもアジア圏からの患者さまが同治療を選ぶ際の最大の理由は、血管を焼かないことで血栓の出現を限りなく0(ゼロ)にできる治療だから、この点につきます」

従来のレーザー治療においては、血管内を高温で処置するため、血栓コントロールのために投薬や安静、通院などが必要。オペは短時間で当日に終わっても、数日は管理上の拘束がある。それに対して、同治療は術式が違うので血栓の出現の心配がほぼない。手術する日に飛行機に搭乗できて、オペをしたその足で飛行機に乗れる。従来型の治療をした場合、大抵の医師は血栓の心配からその日の搭乗はすすめない。本当の意味で「日帰り」治療であることが海外からの患者に選ばれる理由なのだ。

しかも、現在この治療ができるのはアジア圏内ではこのクリニックだけ。アジア圏内の最新治療を求める患者が同クリニックに集まり、医療ツーリズムへの取り組みがより活発になるのは自然の流れとも言える。

もちろん、医療ツーリズムにおいては、病院全体の受け入れ体制の強化、特に多言語による対応なども必要となる。実際、同クリニックでも海外出身で日本語、英語、中国語の話せる日本の医師免許をもつ医師も勤務している。さらには海外医師とのネットワークも豊富にあり、渡航前・帰国後のサポート対応に苦慮することはないという。

しかし、医療ツーリズムが活発化する点において何よりも重要なのは、「最先端の治療が受けられるという技術的な特性だ」と原看護師長はいう。人は「最先端」「短時間」「アジア唯一」に集まるのだ。

同クリニックは、技術の導入が成功した今、保険適用、低価格化、医師への指導・教育による技術拡大の3点をさらに追求し、より多くの人がこの最先端治療を受けられるようにしていきたいという。メディカルツーリズムでの成功を足がかりに、国内患者への治療拡大を目指すという新たなモデルケースなのかもしれない。

※ 記事内の動画、画像は、東京血管外科クリニック®より、許可をいただいたうえで掲載しております。

Writer Profile

田中祐子 Yuko Tanaka

フリーライター、エディター

生活情報誌・書籍・ムックなどの編集者として出版社に14年間勤務。医療関係、ファッション、文芸、ドキュメンタリー、暮らしまわりなど幅広いジャンルを担当。現在はフリーの編集・ライターとして編集執筆中。

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