ノースカロライナ発―ウェアラブルデータの共有プラットフォームが拓く未来医療の可能性

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2016.12.28 Wed.  瀧口 範子

Health and Cloud Computing concept

最近は、IoT化されたヘルス関連のデバイスがたくさん生まれている。運動量をモニターするウェアラブルはもちろんのこと、体重計や体温計、血圧計もインターネットにつながっている時代だ。

こうしたデバイスが取得するデータは個人ユーザーが自分の健康状態をモニターするためだけだと思われがちだが、実はもっと大きな可能性がある。それは、より大きなヘルスケアのエコシステムでデータがつながれることで、より効果的な健康管理ができることであったり、プレシジョン・メディシンという個々人に合わせた治療方法を開発する未来の医療であったりする。

エコシステムについては、すでにそうしたプラットフォーム構築に動いているスタートアップがある。ヴァリディック(Validic)というノース・カロライナ州の会社だ。

同社は、いわゆる個人のヘルスデータを統合して健康管理に役立てることをビジネスとしている。同社のプラットフォームの一方には、個々人が利用しているデバイスがつながっている。他方につながっているのは、病院や医師、健康管理会社、スポーツクラブ、保険会社などだ。

つながるデバイスには多様なものがあるが、現在もその数は増加中だ。たとえば、Fitbit(フィットビット)JAWBONE(ジョーボーン)などのエキササイズ関連のウェアラブル、オムロンなどの体重計、血糖値計測器、姿勢矯正デバイスなど個人が利用するものの他、スポーツクラブで利用する器具、病院で使用される検査器具、生活環境の中に設置されているセンサーなどである。同社ではすでに300種類以上のデバイスのインテグレーションを終えているとしている。

※ Validicは、2016年Frost & Sullivan’s Visionary Innovation Leadership Awardも受賞。

そして、同社のプラットフォームに集められているのは、50カ国近い2億2300万人のユーザーのデータだ。ヴァリディックのサービスは一般消費者向けではなくビジネス向けなので、病院やスポーツクラブなど同社のプラットフォームを採用している組織から利用を勧められた人々だ。そして、その組織側は、そうしたデータをそれぞれの目的に合うようにモニターすることができる。

たとえば、肥満や糖尿病を抱える患者の治療にあたっている医師が、患者の体重や血圧、血糖値だけでなく、心拍数や運動量の推移などもモニターすることができる。しかも、患者自身を診察せずにそれが可能だ。慢性病の患者がどう自己管理しているかとか、病状がどう変化しているかなどを把握できるのは、こうしたプラットフォームがあるおかげだ。

あるいは、社員の健康を向上させたい企業ならば、社員それぞれの運動量や体重などを把握できる。企業にとっては、社員が健康を損ねることによる損害は決して小さくない。健康管理担当者が、モニター画面で全社員の日常的な健康状態や運動量を管理できればどうだろう。要注意の社員がいれば、担当者が面接をして事情をヒアリングすることもできるだろう。

エキササイズやヘルス関連のデバイスが開発されると間もなく、こうしたプラットフォームを構築するヴァリディックのようなスタートアップが出現した。こうしたヘルステックのエコシステムがさらに進めば、いずれ無数の人々のデータから人工知能が学習して、よく似た病状の患者に効果のあるエキササイズや治療などが見いだされる可能性もある。ヘルスデータのプラットフォームは、そんな未来の医療のありかたを想像させてくれるものでもある。

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