ヘルスケア領域のGadget, Wearable, and Designの今――Health2.0 ASIA – JAPANレポート 

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2016.12.15 Thu.  奥田由意

医療・ヘルステック分野の新たな取り組みやプロダクト、サービスを紹介する国際カンファレンス「Health 2.0 Asia – Japan」。ヘルスケア関連の技術やデバイスの最先端の試みを紹介する「ガジェット・ウェアラブル・デザイン」というセッションは、Health2.0 Asiaの中でもとりわけビジネス的な観点から、関心の高い事例が並んだ。各社の商品やサービスの概要を紹介する。

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<登壇者>
野尻哲也 株式会社おいしい健康
井上一鷹 株式会社ジェイアイエヌ
喜納信也 株式会社ミナカラ
伊藤邦彦 株式会社NTTドコモ
宮田俊男 株式会社メディカルコンパス
Ryan Goh Neuroon

<モデレーター>
Matthew Holt Health 2.0共同創業者

クックパッドから12月6日MBOで独立した「おいしい健康」は、メタボ対策、高血圧、糖尿病など、疾患や体質に応じた栄養士管理監修レシピを提供する。「自分にとってバランスのよい食事は個人個人でかなり違う。それを計算しながら毎日ごはんをつくるのは難しいという問題を解決する」(同社代表野尻哲也氏)。
ユーザー個人の身長、体重、運動量や健康情報を登録すると、目標である一食分の栄養価の目安が算出される。そして、提案されたレシピの中から好みのものを選んで「献立に追加」していくと、目安の栄養価に対していまの献立が足りているのか、オーバーしているのかなどがひと目でわかる。
スーパーと連携し、その献立に必要な食品の特売情報なども配信されるしくみも開発している。

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薬局のインターネット化を標榜しているミナカラは、薬局に行けない人向けに、アプリで処方箋の写真を取って送ると、サービスエリア内なら、自宅に薬剤師が薬を届ける「おくすり宅配」サービスや、服用を促したり、服用数を守る指導をする。患者からの薬剤についての質問にも薬剤師が応じる。薬剤師が宅配するのは、法律上、薬剤師は対面で服薬指導をする必要があるためだ。
スマートフォンのアプリなどを通じ、「薬局と患者を結ぶプラットフォーム」(同社代表喜納信也氏)を目指す。将来的には処方箋のデータを読み込ませて、ジェネリックにした場合の処方を表示させることも考えている。

NTTドコモでは、医療用語に特化した自動音声翻訳システムを開発中だ。2020年の東京オリンピックで、外国人観光客の来日に備える意味もある。デモでは、患者役と医師役が、iPadのデバイスに喋りかけ、音声翻訳を介して風邪の診断が行われた。「咳の出はありますか。/Do you have a cough?」「はい。/Yes, I have a cough.」といった具合だ。
翻訳エンジンの精度は日進月歩で向上しているものの、「業態に特化した単語の翻訳が正確ではない」(同社法人ビジネス開発室伊藤邦彦氏)。たとえば、先生をdoctorではなくteacherと訳してしまうのだ。また音声認識の精度そのものを上げるも難しい。
しかし、同社では、すでに訪日外国人への対応に追われる小売業などの法人向けに、「はなして翻訳® for Biz」というサービスを提供している。スマートフォンやタブレットを使う音声翻訳と、接客用の頻出フレーズを登録した定型文機能を組み合わせたものだ。この医療版という位置づけで、培ったノウハウを転用している。代々木にある医院では試用を始めたという。

セルフメディケーションのサポートアプリ「セルフメディコンパス」を発表したのはメディカルコンパス。一般用医薬品(OTC医薬品)と呼ばれる、処方箋なしで買える市販薬をそれぞれの役割ごとに判断して買ってもらうための情報をワンストップで提供するのが目的だ。
たとえば、喉が痛いという症状の場合、症状に加え、周りに風邪をひいている人がいるか、睡眠や食事はどうだったかなどの情報を併せて入力することで、「風邪の可能性が66%でこの薬がおすすめです」といった示唆が得られる。医療行為としての診断ではなく、あくまで判断のための情報という位置づけだ。その薬を買える近くのドラッグストアやコンビニにも誘導する。
「セルフメディケーションが進めば医療費の削減にもつながる」(同社代表取締役宮田俊男)と意気込む。

ウェアラブル端末では、眼鏡の「JINS」を展開するジェイアイエヌが、「JINS MEME」という眼鏡で、視線の動きやまばたきを読み取るメガネ型ウエアラブルデバイスについて説明。
「眼鏡はパンツの次に身につけている時間が長い」(同社JINS MEME開発責任者井上一鷹氏)ため、スマホとつなげて、認知症予防から集中していた時間の計測結果まで、幅広い情報を利用者にもたらす。
認知症の初期段階で視線の動きが独特になることが研究で知られており、東北大学で「脳トレ」で有名な東北大学の川島隆太教授と協力し、認知症の予防に役立てる。
ほかにも集中の度合いを測り仕事の効率アップに役立てたり、居眠り運転の予防につなげることもできる。身体の重心も把握できるため、ランニングの質の向上、歩行中の姿勢矯正にも活かせるなど、利用可能性は広い。2015年半ばに発売して数千個を販売しているという。

ニューロンが手がけるのは、睡眠の質を向上させるスリープマスクだ。不眠症や時差ボケなどで、睡眠不足に悩む人の快眠をサポートする。
脳波、振動レベルによる心拍数、体温などを計測、記録し、人によって異なる睡眠パターンを計算する。
人間の眠りは、脳の中枢まで完全に活動を休止するノンレム睡眠と、身体だけが休んでいて、脳は働いているレム睡眠を繰り返す。そしてこのレム睡眠の質で眠りの深さが決まる。レム睡眠がいつか、また、その頻度や長さなどを計測できるため、適切な時間にアイマスクが振動したり発光して起こしてくれたり、「集中力を高めるための昼寝はいつするのがよいかなど睡眠にかかわるアドバイスが可能」(同社Ryan Goh氏)だ。
なお、日本市場はアメリカに次ぐ大きなマーケットだという。

いずれも応用可能性、展開の可能性は感じさせたが、実用段階では法的な規制などの制約条件で、限定的なサービスにとどまるものもある。
ウェアラブル端末は、とくに自分では感知できない自分に関する情報を一旦外に出して客観的に知らされるという回路ができることが、カギになっている点も妙味といえよう。

Writer Profile

奥田由意 Okuda Yui

フリーランスライター

ビジネス書の出版社ダイヤモンド社勤務ののち独立。ダイヤモンド社出版物やダイヤモンド・オンライン、プレジデント社の「プレジデント・ウーマン」などで記事執筆。誠文堂新光社のデザイン雑誌「アイデア」などで翻訳も手がける。

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