医療・介護分野で活躍するインターフェースとしてのロボットたち――Health 2.0 Asia – Japanレポート

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2016.12.31 Sat.  奥田由意

医療・ヘルステック分野の新たな取り組みやプロダクト、サービスを紹介する国際カンファレンス「Health 2.0 Asia – Japan」。医療や介護分野での活用が期待されるロボットについては、コミュニケーションのインターフェースとしての役割を果たすロボットながら体温を感じさせる3例が紹介された。

公式プログラムより
<概要>
昨年の介護支援ロボットに続き、今年はコミュニケーションのインターフェースとしてのロボットの役割に注目。それぞれに個性的でユニークなロボットを従えた3人の講師が登壇。

<モデレーター>
影木准子 カワダロボティックス株式会社

<スピーカー>
長谷川良平 国立研究開発法人産業技術総合研究所
山田智広 日本電信電話株式会社
武地実 株式会社ウィンクル

シンプルなのに生き物らしさを感じさせる健康管理ロボ「あのね」

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はじめにNTTの山田氏が、服薬を支援するロボット「あのね」を紹介。独居高齢者の健康管理を想定したロボットだ。

実務的な機能だけでなく、人間にとって「生き物に見えるロボット」、「話がしやすいロボット」とはなにか、どうしたら生き物に感じてもらえるか、アニマシーの研究を取り入れ、親しみやすさ、かわいらしさ、愛着を感じさせる工夫がこらされている。

たとえば「二つの三角形が移動しながら箱に入る」という動きは人間にとって「家に入る動物を想像させる」(山田氏)。あるいは目の前にいる人と同じ動作をする、なども同じだ。両手より、ひとまわりくらい大きいサイズで全体にまるみを帯びた形状の「あのね」。頭がぴこぴこ動いたり、光ったりすることも生き物らしさを感じさせる設計だ。

「あのね」はBluetoothでスマートフォンと通信。音声や人間の視線、動作を感じる機能があり、服用予定自刻に「薬を飲む時間だね」とアラート、薬箱に設置されたセンサーで薬の出し入れを感知して、「きちんと薬を飲めたね」と声をかける。その一方で、予定時刻に薬を飲まないと、医師や看護師、薬剤師などに電話をかけ、直接「きちんと薬を飲んで下さい」という声かけが行われる。チャットで送られたメッセージを読み上げることもできるので、離れた家族とのコミュニケーションにも生かされる。「2020年には、ロボットも1人に1つアクセサリのように持ち歩き、1つのデバイスというだけでなく、色々な人とのコミュニケーションを可能にするツールにしていきたい」(山田氏)

好きなキャラクターによるバーチャルロボが作る「最高のおかえり」

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アニメやヒーロなど、キャラクターと一緒に暮らせるをコンセプトにしたバーチャルホームロボット「Gatebox」を発表したのは、ウィンクルの武地氏。AR(拡張現実)とIoTの技術を統合させたものだ。

ホログラム投影技術と各種センサーを活用したコミュニケーション技術を組み合わせることで、魔法瓶くらいの大きさの円筒の箱のなかに、様々なデジタルキャラクターを出現させる。ユーザーの行動を認識して、仕事で疲れて帰宅したユーザーに「おかえり」と出迎えたり、朝起こしてくれたり、家電の操作をしてくれたりする。ボーカロイドの人気キャラクター「初音ミク」が、自分のためだけに特別ライブをしてくれるということも可能だ。スマートフォンのアプリで離れていてもコミュニケーションを取ることもできる。

キャラクターとの次元を超えた共同生活。2017年1月31日まで298,000円(税抜)にて限定予約販売中だ。詳細は、Gatebox公式サイト参照。

「好きなキャラクターを暮らしたい」(武地氏)を実現するプロジェクトで、一人暮らしの人々のヘルスケア、メンタルヘルスへの貢献が期待される。

念じることで意思伝達が可能になる「ニューロコミュニケーター」

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運動機能が低下して動けない人が、「念じる」ことで身の周りの機器を動かせる技術も現実のものになる。「脳波」で機械を動かす技術、ブレイン・マシン・インターフェース(Brain-machine Interface : BMI)を用いた意思伝達装置「ニューロコミュニケーター」の発表を行ったのは、国立研究開発法人産業技術総合研究所の長谷川氏。

ヘッドギアで脳波を読み取り、リアルタイムでパソコンで解析する。ユーザーは画面にアトランダムに点滅する動作幾種類かを見ている。したい動作が現れたときに意識が集中し、それをプログラムが読み取ることで、テレビを見たい、などの意思表示をする。パソコンには適宜動作をするための端末や機器をつないでおき、意思に基づいた動作が行われるしくみだ。

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脳波解析のアルゴリズムの精度向上とともに、動作をする部分のハードウェアを高度なロボットに変えていくことも目標だ。たとえば、嬉しい気持ちは「やったー!」と悔しい気持ちは地団太を踏むなどロボットが本人の気持ちを表現する。現在は、64種類のジェスチャーの作成とメニューへの設定を開発中。「何より患者さんたちの笑顔が最大の動機付け」(長谷川氏)。

長谷川氏は「加齢や疾患で肉体的ハンディキャップを持つ人に対し、いままではバリアフリーで対処していたが、これからは、BMIを使った『脳情報活用サービス』で対応し、いずれはBMIシティをつくりたい」と抱負を語った。

三者三様のインターフェースが展開され、人間に対して、共同生活者としての精度を向上させる方向、あるいは人間そのものの能力を外部に向かって強化するもの、という方向性の違いが興味深かった。

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