”眼”の動きでデバイスを操作 JINS MEME BRIDGEが拓く可能性

Technology

2016.12.22 Thu.  奥田由意

人間が外界から得る情報の約8割が視覚由来だと言われるように、目はさまざまな情報が入ってくる器官だ。その同じ目が、パソコンを操作したり、身の周りの電子機器のスイッチを入れたりする「出力」の器官にもなりうる。メガネメーカーでそんな試みが実現した。

眼鏡ブランド「JINS」を展開する株式会社ジェイアイエヌは、視線の動きやまばたきで身の周りのデバイスをコントロールする、スマートフォンのアプリケーション『JINS MEME BRIDGE(ジンズ・ミーム ブリッジ)(仮称)』を開発。2017年2月にアンドロイドのGooglPlayで無料で公開予定だ。眼の動きでスマートフォンの画面を切り替えたり、写真のシャッターを切ったり、室内の照明のスイッチを入れたりと、眼の動きによる操作が可能となる。

運動神経が侵される難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者で、この病の啓発運動を行う一般社団法人WITH ALSを設立した武藤将胤氏が発起人となり、株式会社博報堂、山本製作所などと共同開発を行った。

「JINS MEME BRIDGE」プロジェクト発起人で一般社団法人WITH ALS代表の武藤将胤氏
「JINS MEME BRIDGE」プロジェクト発起人で一般社団法人WITH ALS代表の武藤将胤氏

同社では、もともとJINS MEMEというウェアラブルデバイスを昨年発売している。「脳トレ」のゲームで知られる東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授と共同開発し、「3点式眼電位センサーを眼鏡の眉間と鼻パッドに搭載し、装着している人の視線の動きやまばたきを計測。同時にめがねのフレームに、加速度と角速度を測定する6軸センサーが埋め込まれ、頭の動きを読み取り、そのデータをアルゴリズムで処理し、姿勢や体のブレなどを測定する」(同社開発担当一戸晋氏)ものだ。

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”自分を見るアイウエア”をコンセプトにした世界初のセンシング・アイウエア「JINS MEME」

これによってランニング時の重心の位置を把握して、よりよいフォームで走ったり、目の動きから集中の度合いや眠気を測って、運転時にアラームを出したり、仕事の効率化に活かすことができる。

眼電位計測のしくみは以下のようなものだ。眼球は、角膜側にプラスの、網膜側にマイナスの電位を帯びており、眼球が動くと、それにしたがって周辺の皮膚の電位が変化する。それをセンサーが捉えて視線移動やまばたきを感知する。

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視線やまばたきによる皮膚の電位の変化を計測する三点式眼電位センサー

このJINS MEMEの技術を基にさらに発展させたのが、今回のJINS MEME BRIDGEだ。JINS MEME Flagship Store原宿で12月15日に行われたデモンストレーションでは、武藤氏がJINS MEMEをかけ、ちょうどゲームコントローラーを操るように、視線を動かしたり、首をかしげ、見ている操作画面の9つの選択肢を選ぶことで、再生する動画や音楽を選択。DJとVJ(ビジュアル・ジョッキー)を同時に兼ねるパフォーマンスが披露された。「視線入力で意思伝達するだけでなく、感情を表現する自由も届けたい」と武藤氏。

9つの選択肢を視線の動きとまばたきでコントロールし、パフォーマンスを披露した。
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視線を上に向け、コントローラーを動かす様子。僅かな目の動きにも反応するため、相当の集中力と訓練が要される。「目を留め続けるのがこんなに難しいと思わなかった」(武藤氏)

ジェイアイエヌでは、武藤氏との協業を通じてALSを支援するかたわら、障がいの有無にかかわらず、「IoTソリューションを生活シーンへ広げる後押しをし、すべての人の生活を便利にしたい」(同社佐藤拓磨氏)という狙いで、ソフトウェア開発プロジェクトのためのソースコード管理サービス「GitHub」上にプログラムのソースコードを公開。オープン・イノベーションにさらなる発展を委ねる。

世界中のデベロッパーやプランナーのアイデアを募るため、東京、大阪、福岡で、プログラマーらが技術とアイデアを競い合う開発イベント「ハッカソン」を開催し、優秀作品を2017年3月テキサス州で開催されるマルチメディアのイベント、SXSW(South by Southwest、サウス・バイ・サウスウェスト)に出展予定だ。

同製品の開発にあたっては、「目は口ほどにものを言う」がひとつのキーワードだったというが、「口」や「言葉」をはるかに凌駕する発信のためのデバイスになるかもしれない。

今回のパフォーマンスの3か月前に渋谷で行われたイベントでは、30分無音状態が続いたという武藤氏。リベンジができたとDJアプリケーション開発の山本製作所・山本俊一氏と喜ぶ姿が、WITH ALSが掲げる「NO LIMIT, YOUR LIFE.」を体現していた。
今回のパフォーマンスの3か月前に渋谷で行われたイベントでは、30分近く無音状態が続いたという武藤氏。リベンジができたとDJアプリケーション開発の山本製作所・山本俊一氏(左)と喜びあう姿が、WITH ALSが掲げる「NO LIMIT, YOUR LIFE.」を体現していた。

Writer Profile

奥田由意 Okuda Yui

フリーランスライター

ビジネス書の出版社ダイヤモンド社勤務ののち独立。ダイヤモンド社出版物やダイヤモンド・オンライン、プレジデント社の「プレジデント・ウーマン」などで記事執筆。誠文堂新光社のデザイン雑誌「アイデア」などで翻訳も手がける。

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