起業家医師たちが語る遠隔医療展望――Health 2.0 Asia – Japanレポート

Opinion

2016.12.16 Fri.  HEALTHCARE Biz編集部

2015年8月に事実上の解禁となった「遠隔診療」。現在の日本の医療界、そしてヘルステックのバズワードの1つとなっている。医療・ヘルステック分野の新たな取り組みやプロダクト、サービスを紹介する国際カンファレンス「Health 2.0 Asia – Japan」でも起業家医師たちによる熱いながらも冷静な議論が交わされた。

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登壇した起業家医師たち

公式プログラムより
最新テクノロジーをもってしてもとって代わることができないのが医師の役割。だが、技術進歩は医師の役割をも発展的に変化させつつある。診療現場とビジネスの最前線を同時に見据えている「起業家にして医師」のパネリストが医療の未来を論じる。

<モデレーター>
池野文昭 スタンフォード大学

<スピーカー>
武藤真祐 医療法人社団鉄祐会祐ホームクリニック
石見陽 メドピア株式会社
内田毅彦 株式会社日本医療機器開発機構
加藤浩晃 京都府立医科大学

<デモ>
物部真一郎 株式会社エクスメディオ
Hideyuki Kashiwagi 株式会社エクスメディオ
原聖吾 株式会社情報医療
明石英之 メドケア株式会社

今回は、4名のスピーカーより寄せられた現在の日本における遠隔医療の取り組みへの率直な見解を紹介する。

東京、石巻、シンガポールにて在宅診療クリニックを運営する武藤真祐医師は、「遠隔医療はアプリケーションでしかない。遠隔医療そのものだけでイノベーションということは到底できない」とバッサリ。日本式コミュニティケアのアジアでのローカライズに取り組む先駆者からの厳しく的を射た指摘に会場の参加者の背筋が伸びた。

「医療のIT化は、アジアの国でも日本より相当進んでいるところもある。シンガポールでは、日本でいう電子カルテ、レセコンから患者のFacebook情報に至るまで1つのプラットフォームで動いている。自分のクリニックの在宅医療患者に異常があった際のアラートも日本に飛んでくるし、それにロボットを繋げてロボットが代わりに対応する実証も始めている。さらには在宅医療の保険も作られている。」と日本の先を行く海外事情も紹介。日本の遠隔医療の現状について、「単なるビデオチャットに止まっていてはいけない」と釘を刺した。

さらには、近くに医療機関があるという日本においては、「遠隔医療だからこそ付加できるバリューは何かを日本のコンテクストで考えないとならない」と指摘。「今後、全ての産業、行動にはヘルスケアが入ってくる。これは、人間がヘルスケアとどのように付き合っていくかという社会、人間の価値観の変革だ。」と視座を高めた。

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京都府立医科大学の眼科医・加藤浩晃医師は、遠隔医療が法律的に未整備であることを指摘。「遠隔医療は、2015年8月に法律としていいですよと解禁になっただけ。どういう疾患のどういった患者にどういった環境で適するのか。現場を含めて考えていくべき」との考えを示した。

日本医療機器開発機構の内田毅彦CEOは、遠隔医療の定義自体が明確になっていないことへの懸念を示した。「対面以外は全部遠隔とひとくくりになっている。遠隔診療とそうでない対面診療とで、予後を見るテストを行うなどして、遠隔診療を評価していくべき。それがあってこそ、どのくらいのリスクを取るか、どのくらいのコストを払うかといった国民目線のディスカッションができるのではないか」との提案を行った。

メドピアの代表取締役社長・石見陽氏は、「テクノロジーにおぼれては寂しい話。肝心なのは、何を提供するのかということ。物理的に離れた人に医療を届けるという本質を見失なわないことが重要。患者さんのところに行くという点は外せず、遠隔と訪問などリアルとネットの融合が求められるのではないか」との見解を示した。

モデレーターのスタンフォード大学・池野文昭氏は、「technology looking for diseaseになっては意味がない。あくまで、ニーズオリエンテッド。課題をニーズに落とし、それを満たすテクノロジーを応用していくのが正攻法だ」と締めくくった。

日本ならではのコンテクストで、遠隔医療に求められるニーズを模索することが求められるとはいえ、日本の事情に固執していては世界の潮流から取り残される。二律背反のバランスをどう描いていくのかが問われる。また、遠隔医療のシステムが複数乱立する現状で、患者側のユーザビリティが置いてきぼりにならないか・・・解禁となったばかりの遠隔医療の課題の大きさにも気づかされるセッションとなった。