トランプ政権下で米国ヘルステックはどう変わる?――Health 2.0 Asia – Japanレポート

Opinion

2017.01.24 Tue.  奥田由意

オバマケアは、ヘルスケア分野への投資をGDPの17.8%まで高め、米国に数多くのヘルステックプレイヤーを誕生させた。オバマケアを痛烈に批判し誕生したトランプ政権下で、米国のヘルステックはどう変わるか。Health2.0創設者であるマシュー・ホルト氏の見解を紹介する。

トランプ政権下でどう変わる米国のヘルスケア?

「打倒!オバマケア」をスローガンに当選したトランプ新大統領。トランプ新政権下で米国の医療保険改革、医療IT政策、ヘルステックへの投資はどうなる? 米国市場のみならず世界のヘルスケア市場への影響をHealth 2.0共同創業者が予測する。

<スピーカー>
Matthew Holt Health 2.0

4000万人以上のアメリカ国民(約6人に1人)が保険に未加入である状態を是正するオバマケアでは2つの柱があった。

1つ目は、保険の取得の仕方を変えたこと。保険料の支払いができない低所得者には補助金を支給することで、2013年以降、実に2000万人が新たに健康保険を持つに至った
2つ目は、ヘルスケアに対する支払いのされ方が変わったことだ。

オバマケアは、ヘルステック・ヘルスケア産業にも影響を及ぼした。2015年には、アメリカのGDPの17.8%がヘルスケア分野に投資され(日本のヘルスケア分野への投資はGDPの8~10%)、変化をテコに多くのヘルスケア企業が生まれた。

オバマケアの廃止を掲げるトランプ大統領の誕生でオバマケアはどうなるのか。先引きが危ぶまれるが、共和党の議席数は上下院併せて51議席。60議席なければ、オバマケアを廃案にはできないので、廃止になることはない。

しかし、メディケア(高齢者や障害者向け公的医療保険)は縮小され、補助金も減らされるだろう。メディケイド(低所得者向け公的医療保険)も同様だ。これらは、2018年以降に起こるのではないか。

これまでより、個人負担は増える。しかし、だからこそ、システムや医療コストの透明性が求められる。そこで今後も重要性が増すのがテクノロジー、ヘルステックだ。安価な遠隔ケア、セルフケアを提供する新しい医療の提供者が出てくるのではないだろうか。

テクノロジーの方向性としては、Medwandのような在宅での測定(聴診、血中酸素、皮膚鏡など)と医師への送信、診断技術などが発展していくのではないか。在宅でのトラッキング、定期的な情報収集と監視体制が充実することで、医師へのかかり方が変化する。それはまた、医療機関への支払いの仕方やしくみが変わっていくことを意味する。また、電子カルテデータを使った公衆衛生も進化していくことも予想される。

スピーカーのホルト氏は、医療制度、ユーザーの医療機関へのかかり方は変化するが、「患者自身がより自身のケアに携わり、効果を高めることで、高騰する医療費を抑えていく重要性は変わらない。そのために、テクノロジーの必要性はより高まる。政権移行でヘルステックの重要性は何ら変わることはない」と結論づけた。

Writer Profile

奥田由意 Okuda Yui

フリーランスライター

ビジネス書の出版社ダイヤモンド社勤務ののち独立。ダイヤモンド社出版物やダイヤモンド・オンライン、プレジデント社の「プレジデント・ウーマン」などで記事執筆。誠文堂新光社のデザイン雑誌「アイデア」などで翻訳も手がける。

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