働き盛りを救え! 泌尿器科医がアプリで拓く個別化医療への道

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2017.01.26 Thu.  黒沼由紀子

働き盛りが危ない。前立腺がんの増加率はうなぎ上りで、2020年には1995年の約6倍になるといわれている。進行前立腺癌の治療では男性ホルモンを抑制するが、弊害として肥満が顕著になってくる。健康リスクはさらに高まるわけだ。

そんな中、救世主としての可能性を大いに秘めたアプリが開発されている。それが、帝京大学医学部泌尿器科・井手久満准教授が農林水産省とタッグして開発した「機能性テーラーメード弁当システム」。1日のうち一食のみを食事履歴に基づきレコメンドされた機能性食品=“体にいい食材”を使ったお弁当に替えるだけで体重と腹囲はもちろん、体の酸化ストレスまで改善できることが実証されたという。開発の背景と展望を取材した。

開発へ駆り立てた思い――
「太っていく患者さんを見ていられなかった」

帝京大学医学部附属病院・泌尿器科 井手久満医師

「太っていく患者さんを見ていられなかったんです」帝京大学医学部附属病院・泌尿器科の井手久満医師は、開発のきっかけをそう振り返る。泌尿器科医として日々接する前立腺がん患者。ホルモン療法で男性ホルモンを薬や注射でシャットアウトする治療を行うが、患者さんはその弊害でみるみる太っていく。

「食事をコントロールすることで、肥満を解消できないだろうか」
医師としてのやり切れない思いが、開発へのエンジンとなった。

増え続ける前立腺がん――
「このままじゃいけない、食い止めないと」

前立腺がんの患者数は2020年には1995年の約6倍になると予想されている

意外と知られていないことだが前立腺がんは全がん腫の中で最も増加率が高い。

2020年には1995年の約6倍になるといわれています。その大きな要因の1つは肥満です。前立腺がんのリスク因子には

・年齢(高齢)
・遺伝
・人種
・喫煙
・運動不足
・食生活

がありますが、この中でも特に肥満に着目した論文が多く、BMI≧30では前立腺がんによる死亡が約2倍になるというデータもあるんです(井手医師 ※以下「 」内同様)」

肥満そのものが前立腺がんのリスクとなり、前立腺がんを治療するためのホルモン療法が太りやすい体を作ってしまう。何とも皮肉な状況がそこにはある。

「過体重や肥満を改善することで前立腺がんのリスクは抑えられる。それなのに、日本男性の肥満率は約30年間に15→30%と倍増しているのは大きな問題です。当たり前のことですが、食事と運動が大切になってきます」

これまで様々な食材の研究を続けてきた井手先生。前立腺がんにはトマト(リコピン)、大豆(イソフラボン)やウコン(クルクミン)が効果的だという。前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA値が落ち、がん細胞を抑制する効果があるためだ。近ごろではコーヒーが有効的なのもわかった。

増え続ける前立腺がん、太っていく患者さん、そして積み重ねてきた食事に関する研究。それが、医師の仕事としては異色なアプリ開発へと歩みを進ませた。

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