遺伝子解析サービス、大手三社の目指す方向性とは

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2017.01.04 Wed.  奥田由意

トップ病院が挑戦するオーダーメイド医療への取り組みを追った「静岡がんセンター『プロジェクトHOPE』が遺伝子解析で切り拓くがん医療の未来」の記事。その壮大なチャレンジ、個別化医療の未来に大きな反響が寄せられた。トップ病院の挑戦の一方、民間の遺伝子解析サービスも大きく成長してきている。遺伝子解析への関心の高まりを受けて、大手三社はどのような方向性を目指しているのか。その展望を追った。

唾液を採取して送り、病気などの遺伝的リスクを調べる遺伝子検査が身近なものになって久しい。遺伝子配列の解析コストが2000年代半ばにそれまでよりもはるかに安価となり、病気のリスクなど約360項目をいまでは3万円以内で検査できる。

検査会社は、検査で自分の遺伝的リスクを知るメリットとして、がんや肥満、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病、アトピー性皮膚炎、骨粗しょう症などに対して、遺伝的特徴に見合う方法で予防できることを挙げている。たとえば太り方ひとつとっても、糖質の利用が苦手なのか、脂質の利用が苦手なのかなどのタイプを知れば、効果的なダイエットにつなげることができるという。

非医療で行われる遺伝子検査には法的規制が存在しない。そのため信頼性に関しては、これまで各企業が独自に規定を設けて事業を展開してきたが、業界団体CPIGI(個人遺伝情報取扱協議会)で、厳格なガイドラインを定め、認定マークを付すなど、信頼性を得るための整備も進む。
こうしたなか遺伝子検査の大手三社はどのような方向を目指しているのか。

ジェネシスヘルスケアは遺伝子解析において国内70%のシェアであり、50万人以上の実績でトップの座を占めている。アジアにも進出し、タイ、香港、シンガポールなど8ヵ国でも検査キットを販売している。検査の結果通知の際、精密検査や治療を勧めることは法で禁じられているため、同社はジェネシスメディカルクリニック六本木を擁し、医療へのワンストップサービスを進める。東田俊彦院長は「検査結果は将来的に抗がん剤などで遺伝子型別の処方や副作用を避ける処方に役立てられる」という。


ジェネシスメディカルクリニック 東田俊彦院長

対照的にデータ活用を主軸にするのがヤフーだ。同社は地域別人口比に即した日本人1万人の遺伝子データを有する。検査時に収集したおよそ300項目のアンケートをもとに、遺伝子情報と生活習慣との関連を調べる調査も進める。「生活習慣や病気予防への行動変容をうながす方向を模索する」(CISO室ゲノムR&D室井上昌洋氏)。研究機関数カ所にも研究用途として利用者の同意を得た上で統計データを提供している。

DeNAは自社のラボで解析も手がけるが「医療分野へ乗り出すつもりはない。あくまでデータをどう活用し、見せていくか」(広報部サービス広報グループマネジャー青野光展氏)という。検査購入者の追跡調査では、結果を見て、病気の遺伝子的リスクに鑑み、45.2%が栄養バランスに配慮、30.4%が運動をするようになったと回答。禁酒・節酒をした人は15.5%、禁煙した人も10.7%いた。
こうしたデータの利用で、予防や未病改善という社会的潮流に寄与できるとはいえ、「遺伝子データの有効利用に関する社会全体のコンセンサスも必要」(同氏)だ。

ヤフー井上氏は「『個人情報』である遺伝子データを安全に保守管理することも重要」と懸念する。データを安全に守り、用途に応じて取り出しやすくするのは、本来は二律背反。厳重な鍵をかけた部屋のなかのものは自由に取り出せるわけがないからだ。井上氏はヤフーも含めデータ管理を得意とする代表的な企業が共同で安全な体制をつくるべきだと指摘する。

ジェネシスメディカルクリニックの東田院長は「一人の人間の全遺伝子配列の解析は数年以内に数万円になると予想しており、将来的にオーダーメード予防、オーダーメード医療へと広げたい」と語る。遺伝子検査で得られるデータの有効活用の可能性は無限に広がる。しかし、保守管理など安全にまつわる「重み」もこれまで以上に意識しなければならない局面に来ている。

大手三社の主力商品比較
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ジェネシスヘルスケア GeneLife
Yahoo! JAPAN HealthData Lab
DeNA  マイコード

Writer Profile

奥田由意 Okuda Yui

フリーランスライター

ビジネス書の出版社ダイヤモンド社勤務ののち独立。ダイヤモンド社出版物やダイヤモンド・オンライン、プレジデント社の「プレジデント・ウーマン」などで記事執筆。誠文堂新光社のデザイン雑誌「アイデア」などで翻訳も手がける。

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