バイオバンクが拓く未来【Vol.3 東北メディカル・メガバンク機構】

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2017.03.28 Tue.  木原洋美

血液や細胞といった「生体試料」を収集・保存・管理して、新たな治療法の研究や創薬、再生医療に生かす「バイオバンク」。前回、前々回と「歯髄細胞バンク」、がん組織を収集する「つくばヒト組織バイオバンクセンター」を紹介した。最終回となる今回は、一般の人の血液を収集し、未来型医療を築いて東日本大震災被災地の復興に取り組む「東北メディカル・メガバンク機構」の取り組みを紹介する。(HEALTHCARE Biz編集部)

めざすは震災復興と未来化医療への貢献
調査段階から住民の健康づくりにも寄与

東北大学 東北メディカル・メガバンク機構
収集している試料:一般の人の血液

東北大学 東北メディカル・メガバンク機構』は、東日本大震災の被災地住民の長期健康調査を行い、その結果を組み込んだ地域医療情報の基盤を構築することで被災地の健康作りと、将来的な医療支援に取り組んでいく目的で、震災の翌年にあたる2012年に誕生した。

バイオバンクとしては、試料や医療情報とゲノム情報などから遺伝子の研究を発展させ、東北を「未来型医療」と最先端研究の拠点にして、復興に貢献することをめざしている。収集するのは一般の人の試料(血液)だ。未来化医療のキーワードは、「個別化医療」「個別化予防」である。

2013年の5月から、地域住民に対するコホート調査、妊婦を中心に生まれてくる子供・父・祖父母の三世代を対象とした「三世代コホート調査」を実施してきたが、昨年11月、3年半目にして目標の参加者合計15万人に到達した。

コホート調査会場

今年3月15日までの参加者の内訳は、地域住民コホート調査が、宮城県52,212人、岩手県31,861人、三世代コホート調査は宮城県で実施し71,824人である。ちなみに宮城県の調査は東北大学が、岩手県の調査は岩手医科大学が担当した。

目標に掲げた15万人という人数は、宮城県と岩手県の全人口のおよそ4%にあたる。

「4%は20人に1人。バスが1台走っていたら、1人は参加者が乗っている計算です。限られた予算のなか、できるだけ大規模で、かつ可能な数字として設定しました」

長神風二氏(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構特任教授)は語る。

東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 特任教授 長神風二氏

コホート調査は、一人ひとりの体質と生活習慣・環境がどのように病気と関連するかを明らかにするための最も優れた研究方法の一つとされる。本調査では、一般の人を対象に、一人ひとりの体質(ゲノム情報)と生活習慣や環境の組み合わせが、健康状態にどのような影響を与えるかを調べた。

その手順はまず参加時に、採血・アンケート調査等を行い、さらにゲノム解析・その後の健康状態に関する追跡調査(郵送によるアンケート調査)や詳細二次調査(数年後の採血やアンケート等による健康調査)について、同意を得た上で実施する、というかなり手間のかかるもの。面倒くさがられそうだが、血液検査やピロリ菌検査の結果を通知するなど、参加者の意欲を高めるための工夫を凝らし、着々と成果を積み重ねたのである。

「参加者のインセンティブとして、血液検査の結果等をお返しするのはコホート調査では珍しいことではありませんが、『遺伝子の解析結果を、お一人お一人に、準備ができた段階でお声掛けをして改めて賛否を問うた上で、お返しすることがあります』と同意をいただいたのは、日本では我々がはじめてです」(長神氏)

さらにアンケート調査の回答から、うつ病等メンタルヘルス面の問題が疑われる参加者に対し、臨床心理士と精神科医が協力して電話をかけ、医療機関への受診を促した。対象人数は数千人。電話支援だけであれば、2,000~3,000人に及ぶ。

「頑張って、病院受診につなげました。一度の電話で受診してくれた人もいれば、4度も5度も電話しても、結局つながらなかった人もいました。震災の影響がありますから、メンタルヘルスに問題がある人の率は高いだろうと予測していましたら、その通りでした。
単に調べるだけでなく、実際のサポートを、ここまでやっているコホート調査は少ないですね」

バイオバンク室長を務める峯岸直子氏(東北大学教授)は微笑んだ。

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