「アプリが治療する未来」に挑むキュア・アップ ――禁煙、生活習慣病から、肺がん、アトピーまで可能性は無限大

Technology

2017.04.12 Wed.  奥田由意

――そもそも起業のきっかけはどんなものだったのでしょう。

ジョンズ・ホプキンス大学へ留学中に、指導教官に糖尿病アプリの論文を紹介されたことが大きいですね。アプリケーション、ソフトウェアが薬と同じ効果を出せる点に衝撃を受けました
医局に属さず北海道で2年、日赤病院で3年、禁煙外来も含めて呼吸器内科の臨床に携わった後、医療のさらなる可能性を模索して「医療×テクノロジー」という新機軸を具体化しようと、中国のMBAを経てアメリカに留学していたときでした。その糖尿病アプリの論文を読み、自分の経験もあって「ソフトウェアを禁煙外来に応用すれば」と思いついたのです。禁煙外来は前述のように、強い依存性にも関わらず治療空白が長く、医師の側も必ずしも専門的な知見を有していないケースも少なくなく、治療が十分とは言えない分野でした。また、アメリカでも禁煙治療アプリケーションは手がつけられておらず、ソフトウェアで治療効果が出ればサービスとして、日本だけでなく世界でも通用すると思いました。

――とはいえ、資金面や優秀な人をいかに巻き込むかなど起業にはいろいろ困難がおありだったのではないでしょうか。

お金は事業計画を整え、マーケットがあり、すべきことをすればついてくると思うのですね。もちろん事業を成立させる・成長させることは大事ですが、1番は患者さんに、医師・医療に、国家にどういう貢献ができるのか、を大切にしたいと思っています。

人は、声をかけてもすぐには来てくれないので大変ですね。今度会社をやめることになったと言われたときに誘っていては遅いです。2年とか、気長に待たなければ本当に来て欲しい人は来てくれません。つねにコンタクトをとり、その人がいまの仕事をやめようかどうしようかという気持ちが芽生えた瞬間に、そういえばあんなことをする会社があって誘ってくれていたな、と一番に思い出してもらえるようにする。実際、COOの宮田は2年かけて入社してもらったし、共同経営者の鈴木もフルコミットしてもらうまで半年かかりました。

――起業された方で、研究や医師として一流でもマネジメントは苦労するとおっしゃる方も多いようですが。

僕はマネジメントが得意だとはまったく思っていません。だからマネジメントしなくても勝手にすべきことをする「自走」する人を採用しています。経営者である僕自身が深くコミットして、私たち理念やビジョンに共感してくれる人をじっくり見極めて採用しています。離職率も低いので、そこに齟齬は無いと感じています。さきほど言ったように採用にはとても時間をかけますし、パートタイムや部分的な在宅勤務も柔軟に受け入れて社員の働き方に多様性を持たせているので、その点で働きやすいと思ってもらえているようです。

――御社をはじめ、デジタルヘルスやモバイル系のベンチャーには優秀な方が多く集まっているという印象です。

少し前は、医師の同期で、医師以外の職業というとコンサルティング業界に行くというのが主流でしたが、最近は起業がトレンドになっている気がします。やりがいがあり、社会的意義があり、クールな仕事として認知され、ベンチャーに人が集まる機運があるのは有難いことですね。もう一つの傾向としては製薬会社からの参入が多くなってきていますね。

――起業がしやすそうなイメージのアメリカと比べると、とくに日本のヘルスケアや医療分野での起業は規制もありハードルが高そうです。

僕は日本で起業するのがハードルが高いとは思いません。有象無象が起業するアメリカに比べ圧倒的にプレーヤーが少ないので、むしろ起業しやすい環境にあります。規制が厳しいといわれますが、アメリカのFDAの承認は日本以上に厳しいものです。理念やビジョンがあって、やりたいことがはっきりしてさえいれば、と思います。

――今後の展開を教えて下さい。

まずは、今年始める治験で薬機法の承認、保険償還を目指します。治療アプリは5年で現在の二種類以外にも横展開し、ソフトウェアの治療のバリエーションを増やしていきたいと思っています。その後10年から20年で私どもが理想とするAI化を実現させ、「アプリによる治療」という分野を大きく切り拓きます。

また、日本だけでなくアメリカ進出も予定しています。製薬業界やハードの医療機器は欧米企業がとても強いですが、ソフトウェア・アプリの医療機器という分野ではまだグローバルで確固たる勝者はいません。ソフトウェア・アプリ分野では日本が強いと言われるように、そのパイオニアとなっていきたいと考えています。

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佐竹晃太氏 Kota Satake

株式会社キュア・アップ(CureApp Inc.) 代表取締役

医師。MBA/MPHホルダー。2007年慶應義塾大学医学部を卒業。北海道の北見赤十字病院、東京都の日本赤十字社医療センターで呼吸器内科医として臨床にあたる。2012年上海の中欧国際工商学院(CEIBS)へMBA留学。さらに、米国ジョンズ・ホプキンス大学の公衆衛生学修士(MPH)プログラムで医療インフォマティクスを専攻。専門の呼吸器はむろんのこと、ビジネスからアカデミック分野での海外モバイルヘルス事情にも精通している。2014年より現職。モバイルヘルス事業に携わりながら日本赤十字社医療センターで外来診療も行う。現在キュア・アップで開発中のプロダクト・サービスは以下の3種類。

  • CureApp禁煙(ニコチン依存症治療用アプリ、慶應義塾大学呼吸器内科学教室と共同開発:多施設共同臨床研究中)
  • CureApp脂肪肝(非アルコール性脂肪肝炎(NASH)治療アプリ、東京大学医学部付属病院と共同開発 、臨床研究中)
  • 法人向けモバイルヘルスプログラム:ascure(アスキュア)禁煙プログラム

Writer Profile

奥田由意 Okuda Yui

フリーランスライター

ビジネス書の出版社ダイヤモンド社勤務ののち独立。ダイヤモンド社出版物やダイヤモンド・オンライン、プレジデント社の「プレジデント・ウーマン」などで記事執筆。誠文堂新光社のデザイン雑誌「アイデア」などで翻訳も手がける。

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