おしっことウンコを予測せよ。 脱糞経験から生まれた「人間の尊厳」への飽くなきチャレンジ

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2017.04.03 Mon.  奥田由意

腹部につけた小さな超音波装置で膀胱の様子を検知し、何分後に尿が出るかを予測する。介護現場に世界初の排泄予知ウェアラブルデバイス「DFree」が導入されようとしている。

自力での排泄がしやすくなり、おむつからの解放につながるなど、介護される人のQOLが向上。また介護する側もおむつ交換の適切なタイミングを把握したり、自力排泄へのトイレ誘導タイミングが的確になるなど、大きな負担軽減となる。

留学中のアメリカで、便を漏らすという強烈な体験を経て、Diaper Free(おむつからの解放)という意味をこめた「DFree」を開発したトリプル・ダブリュー・ジャパン代表取締役中西敦士氏。医療の専門知識はなく、超音波の技術についてもまったくの素人の文系人間が着手した人間の尊厳への飽くなきチャレンジ。

排泄デバイスの展望と起業の心構え、揺籃期の苦労、資金調達、優秀な人をいかに確保するか、異業種からヘルスケアビジネスに参入する際の秘訣、そして万策尽きたというピンチをも打開した究極の正攻法もうかがった。

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社 代表取締役 中西敦士氏

――「DFree」は、まずは排尿予測デバイスとして、介護施設で使用され始めましたね。海外でも実証中とのことですが。

国内100箇所の介護施設に導入しはじめています。海外はまずフランスで実証を始めています。世界最大の介護施設グループで、いずれはEU全域に広げるつもりです。香港でも導入準備中です。排泄予知をして漏らさないという発想がどの国でも驚かれ、是非使ってみたいと言ってくれます。でも日本のように自力排泄を人間の尊厳の最後の砦と考えるのは実は特殊なことなのかもしれません。

――フランスは歴史的にも人権意識が高そうに思われますが。

ヨーロッパは人間の尊厳を尊重するというイメージがありますよね。ところがフランスの介護現場では、「管理する側」の合理的な都合が優先されています。介護される人はおむつがむき出しの状態なのです。「ミニスカートのおばあちゃんがいるな」と思ったら、オムツだけでいる。ズボンをはかせたり長いネグリジェを着せると、おむつ交換の邪魔になり、効率的でないからです。

――香港はアジアでは先進的なイメージですがいかがですか。

自力排泄や尊厳という以前に、昼寝のときでも手をグローブで拘束されます。日中も車椅子では手を拘束されている方もいます。そして、夜中交換をしなくてすむよう特大サイズのおむつを当てるのです。日本の通常の介護おむつと比べて下さい(写真参照)。また、土地が狭いので、介護施設専門の建物はあまりなく、高層ビルやマンションのワンフロアが介護施設だったりするのもカルチャーショックでした。

日本の介護おむつ(左)と、香港の特大サイズの介護おむつ(右)。体の半分以上が覆われそうな規格外の大きさだ。

ほかにもいろいろな国の介護施設を視察しました。シンガポールは香港同様土地は狭いのですが、介護施設は400~500床の巨大施設があります。ただし、フロアで男女を分けていて、老齢にして「席を同じうせず」なんですよ。

それから、アメリカは日本のような介護施設はなく、お金のある人だけが月50万円から100万円の高額施設に入所します。基本的には自宅介護で、寝たきりになればホスピスが適用されます。ホスピスが適用されるのは、余命半年と診断された時なので、末期に牧師さんが「天国はいいところですよ。死は怖くないですよ」と安心させてくれて、息を引き取るまでが一連の流れです。

DFreeで、世界の介護の現場は変わると思っています。2020年までに、排泄予知デバイスは、さらに精度を上げながら、老若男女、体型に関わらず全ての必要な人に行き渡るようにしたい。そして並行して排便のデータを蓄積していて、こちらも実用化を進めています。

「DFree」本体(右)と、下腹部に貼り付ける際のテープ(左)。本体はもちろん、肌荒れフリーのテープ素材選びにも徹底的にこだわったとか。
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