目指したのは「蚊」。痛くない注射を実現する植物樹脂製ランセット針

Product

2017.04.20 Thu. 

株式会社ライトニックスが開発する植物生まれのワクチン針が第29回「中小企業優秀新技術・新製品賞 優良賞を受賞した。プロダクトの紹介と、注射針のさらなる進化に向けた意気込みをレポートする。(HEALTHCARE Biz編集部)

注射針が誕生したのはおよそ150年前。発明されてからずっと、注射針は金属でできていた。株式会社ライトニックス(兵庫県西宮市)の創業者、福田光男氏は、今から15年前、植物樹脂製の針の開発を始めた。

金属針は侵襲が深く痛みを伴い、患者にとって負担が大きい。植物樹脂に目をつけたのは、手術糸のように体内留置できないかと考えたからだ。どうせ開発するなら痛みを極限まで減らしたい。目指したのは刺されてもほとんど気づかない蚊の針。

ライトニックス社が開発した世界初の植物樹脂製のランセット針「ピンニックスライト」は厚生労働省による異例の短時間認可(申請から6ヶ月)を得て、2012年より販売を開始した。ターゲットは主に糖尿病患者。糖尿病患者は血糖値を測るために1日3回〜6回の採血をするが、「ピンニックスライト」は従来の金属ランセット針に比べて傷が最小限に抑えられ、傷が治りやすく、樹脂製のためむき出しの状態でも危険を伴わない。それに加え、使用後は針が内部に収納されるため使い回しを防げるに仕組みになっている。また、ウィルス感染を防ぐために完全個別包装されているのも、キャップで針を覆う必要のない樹脂針だからこそ実現できた。

穿刺痕がどれほど小さいかというと、通常の金属針は円柱状で鋭利な形状であるのに比べ、「ピンニックスライト」は薄い紙のような形状になっている。傷は一直線になるため治りが早く、使用後もガーゼや絆創膏は必要ないほどだ。

実際に「ピンニックスライト」を使用している患者さん、病院関係者の評価も高い(以下、兵庫県立柏原病院より)。

・1個ずつ単独で使用できるため、持ち運びに便利
・痛みを訴える患者が少ない、ほとんどいない
・看護部でも針刺し事故が発生することがあるが、これはまったくその心配がなく安全である
・個別包装、単独使用は災害時に便利

現在は浜松医科大学医学部付属病院、松本広域消防局、秋田県刑務所内などでも導入されている。また、2013年にはアメリカ食品医薬品局(FDA)への製品登録を完了し、海外でも販売実績を伸ばしている。

「ピンニックスライト」はさらに進化し、同社は現在、皮内投与できる針を開発中だ。皮内投与ではマイクロニードルという剣山型の針が主流だが、マイクロニードルは皮内に薬剤を留めるのに必要な針数が多く、皮膚に押し付けるだけで厳密には刺さっていない。これを、マイクロニードルより少ない本数の針(樹脂製)で皮内に確実に薬剤を投与できる形状を開発した。非常に少量の薬剤を体内に入れること、マイクロ単位で皮膚から決まった位置まで穿刺できることに成功し、今後、ワクチン接種やシミ取りなど美容分野への展開が予定されている。

「ピンニックスライト」の大きな課題は単価にあった。2016年実績で100万本を出荷しており、使用者からの評判も良いものの、通常1本単価が従来の金属針に比べ毎日使用するものとしてはやや高価であった。それが現在、量産化の実現に伴い、価格面においても従来製品と同等価格での販売が可能になった。患者さんの負担が軽減することに加え、海外に向けて日本の高度技術をアピールできる側面においても、「ピンニックスライト」のさらなる普及が望まれる。

近年、予防に対する個人の意識が高まっている。自己採血による検査が認められたことも後押しし、様々な場面で日常的に注射針が使われるようになった。この状況で、樹脂製の「ピンニックスライト」はその存在価値を発揮する。

「誰でもどこでも注射針が使えるということは、構造的に十分安全でなければなりません。ピンニックスライトはその点で非常に優れています。また、樹脂製なので焼却処分できることも高く評価いただいています。現在は皮内投与の針を開発中ですが、“刺す針”だけではなく、“血液を抜いて溜める針”“薬剤を入れる針”“体内において来る針”など、樹脂製の針のシェアを広げていきたいと考えています」(福田萌・現社長)

そもそも、創業者の福田光男氏が樹脂針を開発しようと考えたきっかけは、手術糸のように体内留置できるものを作りたいという思いからだ。今は「痛みの少ない注射針」として業界から高い評価を得て実績を伸ばしているが、それに甘んじることなく「溶ける針」の開発を進めている。患者に痛みの少ない治療を。150年の注射針の常識を覆し、医療業界にイノベーションを起こす同社の取組みに今後も期待したい。

製品に関する問い合わせ等
info@lightnix.jp

文・ふるたゆうこ

Share