スマートベッドとセンサーが患者を見守る「介護・福祉ロボット開発展」レポート

Technology

2017.05.30 Tue. 

介護や看護スタッフの負担をいかに減らしながら、
入居者・患者を見守るか――。

テクノロジーによる介護イノベーションの大きなテーマの1つが「見守りシステム」だ。「ヘルスケアIT 2017」及び同時開催の「介護・福祉ロボット開発展」(2017年4月17日~19日、東京ビッグサイト、主催:UMBジャパン株式会社)でもスマートベッドや各種センサーなど多様な見守りシステムの出展、セミナーが目立った。HEALTHCARE Biz編集部が注目した各社の取り組みをレポートする。

見守りセンサー「Neos+Care」による居室見守りシステム~オリックス・リビング

オリックス・リビング代表取締役社長、森川悦明氏は「介護職場におけるIT活用~介護サービス業における資産性の向上」セミナーにおいて、同社の施設に導入している居室見守りシステムを紹介した。

オリックス・リビングは見守りシステム以外にも、介護リフトの導入や書類、バイタル測定のデジタル化など、IT化・機械化を積極的に進めている。その背景には施設の供給過多と人材不足があると森川氏は指摘する。人材不足に対して、国は介護職員の処遇改善などの対策を打ち出しているが、「最もリアリティーがあるのは、介護ロボットやITの活用」だと強調する。そこで同社は全施設にwi-fiと業務用タブレットを導入。2015年6月にはインフラ整備を完了した。IT化のひとつが見守りセンサーNeos+Care」による居室見守りシステムだ。

同社の施設で起きた事故のうち、最多だった転倒やベッドからのずり落ちの9割近くは、誰も見ていない居室で起こっていた。重篤な事故につなげないためには、倒れた瞬間に職員が駆けつける必要がある。見守りセンサー「Neos+Care」は入居者のベッド上の動きをアルゴリズムで感知。転倒につながる予兆動作を検知すると、タブレットに画像を転送するとともにアラートを発する。この見守りシステムによって、導入5か月で転倒やずり落ちが半減。さらに21ヵ月で65%減と、大きな効果が挙がっている。

次に、展示ゾーンで編集部が着目した見守りシステムを紹介しよう。

家族の暮らしを見守るシステム~エヌジェイアイ

エヌジェイアイ体動センサ「安心ひつじαは、マットレスなどの下に設置し、体動、心拍、呼吸、離床の4つを一度に計測できる機能を搭載した、見守りシステムだ。4つのデータはスマートフォンやパソコンで見ることができる。データの変化は家族のスマートフォンにメールで通知するので、離れて暮らす家族にも安心のシステムだ。またパソコンでは60人分のデータを把握できるので、介護職員の業務軽減にも役立てられる。

厚みのあるマットレスの下に敷いても体の動きを検知可能
スマホで心拍や呼吸等の状態を確認できる

安心ひつじα」は検知システムをコンパクトにしたことで、5万8千円という低価格が実現した。すでに3月30日に販売を開始しており、施設だけでなく個人からの問い合わせも多いという。初年度で1~2万台の出荷を見込んでいる。

 iPhoneに呼吸数を記録し、無呼吸や乳幼児うつぶせ寝対策~リキッド・デザイン・システムズ

リキッド・デザイン・システムズは、睡眠中の呼吸数をiPhoneに記録するIoT睡眠見守りシステムIBUKI(いぶき)の受注販売を6月より開始する。エアパッドをマット下に敷くだけの簡単な操作性を実現した。睡眠中は身体に非接触でバイタル情報(呼吸数)をiPhoneのヘルスケア・アプリに記録する。本体はとても小型で、誰でも簡単に無線接続できる仕様を目指したという。呼吸数が異常に低いもしくは高い場合には、本体がアラートを発すると同時に、10メートル以内ならiPhoneに通知される。施設などの事業者向けには4人同時に、呼吸数、体動、離床をモニターできるiPad専用アプリを用意する。今後は遠隔地でもメールで通知できるようにする予定だという。

専用小型エアパッドを布団やベッドマット下に設置して使用

 

介護施設のほか病院や保育園からの問い合わせも多く、介護職員や看護師による夜間の見守り負担の軽減が期待されている。病院の場合、重篤な患者ではなく一般病棟での利用が想定されているが、施設の場合は軽度から重度の介護状態まで幅広い利用が可能だ。

IBUKIは、通常は布団やベッドマット下に専用小型エアパッド設置して使うが、テストでは枕の下に置いても呼吸数を記録できている。製品版では、睡眠中の低呼吸、無呼吸、乳幼児のうつぶせ寝による呼吸障害などがわかるような仕様となる予定だ。また、乳幼児用は、うつぶせ時に呼吸がしやすい専用マットレスにセンサーを内蔵するタイプを同時販売し、自宅や保育所などにおける乳幼児の見守りにも対応する予定だと言う。

このセンサー本体の販売は6月からで、事業者向けに(4人同時モニター)は5万程度、iPhone 対応の個人向けは3万円程度という低価格が予定されている。

睡眠センサーIBUKI クラウドファンディングサイト
https://www.makuake.com/project/ibuki/

割引での販売もあり、要注目だ。

岐路に立つ介護業界
カギを握るのはIoTやテクノロジー

見守りシステムは、機能や性能、データの精度も向上しており、製品やサービスによる差別化がむずかしくなるなか、低価格帯の製品が登場し、価格競争の段階に入るのかもしれない。

見守りは、睡眠時の見守りシステムだけで完結するものではない。他の見守りシステムと組み合わせ、トータルで介護される人の安全、家族の安心、施設職員の見守り負担の軽減が実現していくことになる。

オリックス・リビングの森川氏は「介護保険の方向が自立支援に変わるなか、介護業界は岐路に立っているが、安全の確保のための予知、無駄をなくすため行動の省略に目を向ければ、日本の将来に明るいものが見えてくるだろう」と、確信に満ちた言葉でセミナーを締めくくった。IoTやテクノロジーがそのカギを握っているのは間違いない。

■文 坂口 鈴香

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