世界初!Apple Watchでアトピーのケアが変わる! 「ひっかき」動作計測アプリが登場

Technology

2017.05.17 Wed.  松田ひろみ

誰しもが日常的に経験するにもかかわらず、痛みに比べると軽視されがちな肌の悩み、それが「かゆみ」だ。患者本人の主観的な訴えでしか表現できないため、これまでは定量的に測ることの難しかった「かゆみの度合い」を、Apple Watchを用いて容易に「見える化」する無料アプリがついに登場した。その詳細をお伝えする。

Apple Watch内蔵の加速度センサーで
就寝中の「掻き動作」をカウント

例えば、深刻なアトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎をわずらっているわけではなくても、季節の変わり目や環境の変化が重なったときなどに肌にかゆみを感じることには、誰しも覚えがあるのではないだろうか。

人間はかゆみを感じると知らず知らずのうちにその部位を引っ掻いてしまう。引っ掻くと一時的には爽快感があってスッキリしたような錯覚に陥るが、その実、皮膚は傷ついて炎症を起こし、それがまた次のかゆみの引き金となりかねない。

その悪循環を断ち切るためには保湿によるスキンケアや、場合によってはステロイド剤などを用いた薬剤治療が必要となるわけだが、そういった従来の対策に加えて、新たなソリューションとなりうる技術が誕生した。

それが、ネスレスキンヘルスから2017年4月にリリースされた世界初のかゆみ計測アプリ「Itch Tracker(イッチトラッカー)である。これは世界中の医学研究者向けに公開されているApple ResearchKit を利用して開発されており、BluetoothでApple WatchとiPhoneとを連携させて用いる。Apple Watchを身につけてベッドにもぐりこめば、Watchに 内蔵されたx軸、y軸、z軸の3軸の加速度センサーによって、眠っているあいだの「引っ掻き動作」が自動的に計測・記録されるという。

加速度センサーと独自のアルゴリズムで「掻き動作」のみを計測する

ノイズを除外して「引っ掻き」動作のみを
検出するアルゴリズムを1年かけて構築

筆者も実際にこのアプリを起動させたApple Watchを身につけて、腕を振ったり身体を揺すったりといろいろな動きを試してみたが、「引っ掻き」動作のみを拾ってくれることに驚いた。

人は眠っているあいだに、軽く鼻の頭を掻くといった小さな動作から、寝返りを打つ、ときには物音が気になって起き上がるといった大きな動作まで、無意識のうちにいろいろな動きを行っている。そういった種々の動きはノイズとして処理し、皮膚に負担のかかりそうなある強度以上の「引っ掻き」だけを抽出して計測する、そのアルゴリズムを確立するまでに、ネスレスキンヘルス社では実験およびデータ解析に1年を費やしたという。

使い方はとても簡単だ。就寝前に、iPhoneアプリ上で「今日1日のかゆみの強さを10段階で自己評価してください」といった簡単な質問に答えてから、Apple Watchを腕につけて眠り、朝起きたら BluetoothでiPhoneアプリと同期させる。睡眠中、つまりおよそ8時間分のデータを同期するには10分程度かかるそうだが、iPhoneをポケットに入れたまま朝の身支度をすればその待ち時間は特に気にならないだろう。

同期が終われば、自分が眠っている間に知らず知らずどれくらい身体を引っ掻いていたのかを、わかりやすくテキストとグラフィックで確認できる。一晩で何回、というだけでなく、どの時間帯に、どれくらい連続して引っ掻いていたのかがビジュアルで表示されるのだ。その画面を病院の診察室でドクターに見せて、かゆみの度合いを伝えるといった使用シーンも考えられるだろう。

これまでは「なんとなくかゆくてよく眠れなかったな」「最近首の回りがかゆいけれど、クリニックで相談しようかどうしようか」と曖昧にしか自覚できていなかったかゆみの大きさが、このアプリを使えば可視化できるのだ。

人間の目による計測と比較しても
90%超の「引っ掻き動作」検出率を誇る

開発の最終段階では、実際のアトピー性皮膚炎の患者さん5名にこのアプリの入ったApple Watchを身につけてもらい、1泊の入院宿泊をしてもらったという。そして一晩のあいだに起こった「引っ掻き」動作をビデオとウォッチの両方で測定したそうだ。

ビデオでの計測の仕方はこうである。赤外線カメラで撮影した映像を、技師が肉眼で確認して一つひとつの「引っ掻き」動作およびその他の動作を識別しながら用紙に記録していった。それをイッチトラッカーの検出した「引っ掻き」動作と1件ずつ時刻・強度・回数でつけあわせを行ったところ、陽性的中率、つまり「イッチトラッカーで拾った動作のうち、どれだけのものが肉眼でも検知されているか」は、5名平均で90%超だったそうだ。また、イッチトラッカーの「感度」、つまり「技師のカウントした掻き動作のうち、どれだけのものがイッチトラッカーでも検出されていたか」は、80%超だったという。

つまり、Apple Watchとこのアプリとを使えば、プロが目で見て観察するのと遜色のないレベルで夜間の引っ掻き動作をカウントすることができるのである。

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