残業時間の“青天井”はもう許されない。 健康経営へのスピードシフトが 今、求められる理由

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2017.05.19 Fri.  奥田由意

長時間労働の是正が何かと話題になる昨今。安倍政権のもとで働き方改革が進められ、残業時間についての年内での法改正も視野に入ってきた。同時に労働者の健康確保のための産業医・産業保健機能の強化も、働き方改革を支える基盤としてその重要性が高まっている。こうした時流のなか、2017年4月21日、産業医サポート事業を手掛けるエムステージは、企業の人事担当者に向けた「長時間労働対策と産業保健」をテーマにしたセミナーを開催した。講師を務めるのは社労士でありカウンセラーでもあり、産業医の動向にも詳しいオフィスブリーゼ代表の舘野聡子氏。長時間労働の規制の動き、労働者の心身への影響の実態、産業医の必要性など、「健康経営」に欠かせないポイントをレポートする。

オフィスブリーゼ代表。特定社会保険労務士、シニア産業カウンセラーの舘野聡子氏

長時間労働を規制する政府案が国会を通過
罰則対象が拡大すると予測

まず、長時間労働について背景を整理しておこう。2015年末に電通の新入社員が過労死自殺したことなどを受けて、2016年10月厚労省が同社に立ち入り調査を行い、結果同社と幹部一人が書類送検されたことは記憶に新しい。社会的にも過労死が大きく注目され、2016年12月には政府が「過労死等ゼロ」緊急対策を公表し、続いて、2017年3月「働き方改革実行計画」のなかに、残業の上限時間を規制する提案(時間外労働の上限規制等に関する政労使提案)が盛り込まれた。

残業時間についてはこれまで実質青天井でしたが、それに法的な規制がかかることはほぼ確実になった」と舘野氏。

そもそも、労働基準法第32条で、1週間について40時間を超えて、また1日8時間を超えての労働は原則禁止。ただし、同法第36条で、使用者は労働組合と協定を結び、休日や上記の時間を超えて限度時間(年360時間)内で労働させても罰せられず(いわゆる36協定)、「特別の事情」がある場合には、労使で合意して決める一定の時間まで労働時間を延長できるとも定められている(特別条項付き36協定)。

「つまり、残業の限度時間は1年で360時間だが、納期が迫っているなど、特別な事情がある場合、限度時間を超える『一定の時間』は労使で合意して決めると書かれているため、いくらでも長くできるというからくりがあり、事実上残業時間は規制されていないも同然だった」のだ。

特別条項付き36協定では、労使の合意があれば特別条項で労働時間の延長が可能。実質残業規制はないに等しい

その青天井から、前述の新提案では、「時間外労働の上限が年720時間(=月平均60時間)に、単月でも100時間までと決められた」。

加えて、次の5点の要件もすべて満たすことが求められる。

  1. 45時間を超える月は年の半分
  2. 1年を平均して月60時間を超えない
  3. 2ヶ月平均、ないし6ヶ月平均は80時間以内
  4. 単月100時間以内
  5. 年間720時間以内

残業の上限時間の規制とともに、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」として2017年1月に発表されたガイドラインは「使用者が労働者の労働時間を適正に把握する責務があることが強調されて」おり、「健康管理やメンタルヘルス対策も義務づけられ、違法な長時間労働の監督指導も強化している」とのことだ。

改めて考えたい長時間労働の弊害
メンタルだけでなく動脈硬化、心臓疾患までに及ぶと実証

長時間労働がなぜ問題なのか。業務効率や企業利益の阻害、風評リスクという実利的な面もあるが「一番大きな理由は労働者の心身に悪影響を及ぼすこと」だ。

よく知られている精神への影響はもちろん、長時間労働により、動脈硬化の悪化、心臓疾患、脳血管疾患発生原因にまでもなることなどが医学的に明らかになっている。「脳・血管疾患、心臓疾患、精神障害発症(自殺含む)は業務に関連して発症したと判断され、過労死も含め労災認定の対象になる。そればかりか労災認定後に民事訴訟に至るケースも増えている」。

脳・血管疾患ならびに虚血性心疾患等の認定基準では、1ヶ月あたり概ね80時間が「過労死ライン」となっているが、実際の労災認定件数を時間外労働時間別に見ると、月45時間の残業時間を超えたところから認定されている

「過労自殺も含む精神障害は、20時間未満でも、パワハラやいじめなど他の要件との関連で認定されおり、メンタルヘルス対策も重要になってきている」と舘野氏は指摘。2015年の精神疾患の労災認定は年400名以上にものぼっているという。

長時間労働の削減は健康管理や医学的なリテラシーの必要性と密接に結びついているのだ。

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