その不注意、ADHD脳が原因かも? 職場の困った人たちを活かす前向きなトリセツ

Opinion

2017.07.24 Mon.  木原洋美

「あの人、なんか変わってるんだよね」「光るものはあるんだけど、扱いづらくって…」 職場でそうささやかれている“困った社員”はいないだろうか。

気が散りやすく、注意力を持続できない。
大切な書類を網棚に忘れるなんて日常茶飯事。
落ち着きがなく、常にあれやこれやと慌てふためいている。
よくいえば自由だが、空気が読めずに失言を繰り返したり、突飛な行動が多い。

そういえば…と、思い当たる人の顔が浮かんだ読者も多いのではないだろうか。

実は、これらの特徴を持つ人は「脳の癖」が強い傾向がある。「ADHD脳」といわれるものだ。困った言動はあるものの、常識にとらわれない分、自由な発想で殻を破り、独創的なアイデアを生む良さもあるADHD脳。クリエイティブな業種や職種に多いといわれるが、一般の職場でも「ADHD脳社員」の例は散見される。そこで今回は、ADHD脳の特徴はどんなものか、トラブルを起こさないための「トリセツ」とは何かを日本に初めてADHDを本格的に紹介した司馬理英子医師に聞いた。「名医」と世界的に名を馳せながら、「ADHD脳」の持ち主であることが濃厚なスーパードクターの例にも要注目!(HEALTHCARE Biz編集部)
※ ADHD(注意欠如・多動性障害)

もしやADHD?奇行が多い
世界的スーパードクター

自らの専門領域において画期的な発明をいくつも成功させ、世界的な名声を勝ち得ている名医・A医師。だが、そんな輝かしい実績の裏には、あまりに自由すぎる言動と繰り返されるトラブルも潜んでいる。

「あの人はスーパードクターじゃなくてスーパー“毒”ターだよ」

そんな悪評も聞こえてくるA医師。
その突き抜けた“毒ター”ぶりの一部を紹介してみよう。

  • アイデアが閃いたらすぐに実行しないと気がすまない。取材中にも秘書に工具を用意させ試作に没頭。
  • ルールや常識なんて度外視。全面禁煙の院内でも、室内をタバコ臭くすることなく喫煙できる「プライベート排煙機」を自作。
  • 場の空気を考えずに衝動的な発言を繰り返す。セクハラ発言も多々(本人は現場を明るくするギャグのつもり)

イタズラ小僧のような無邪気さ。傍若無人な振る舞い。スリルを楽しむかのような危なっかしさ。
だが、そんなA医師もかつて異国で修行していた頃、「うつ病になったことがあった」と明かす。「死にたくなったこともある」と。

語学はネイティブ並なのに、相手の真意を察知するのが苦手。いわゆる「空気をまったく読まないタイプ」だが、だからこそ、我が道を貫き、成功できたとも言えるA医師だが…

「詳しい事情は言いたくないんだけど、生きづらさを感じて苦しかった」
ほんの一瞬、自信なさげに視線が空を泳いだ。

程度は違えど誰もが当てはまる
大人の「ADHD脳」の診断規準

「生きづらさ」は、彼がしばしば見せる、その立場や職業スキルとはあまりにもかけ離れた幼稚な言動と無縁ではないだろう。

原因として思い浮かぶのは、ある「脳の癖」。「ADHD脳」と呼ばれる発達障害の1つだ。

大人の「ADHD脳」の診断規準には次のような項目がある。頻繁に「ある」項目が、数多く当てはまる場合は疑ってみたほうがいい。

1.力を出し切れない、目標に到達していないと感じる

2.計画、準備が困難
学校のような枠組みや、そばで世話を焼いてくれる親の存在がないと、毎日の生活がおぼつかない。普通の人には「ささいなこと」が、巨大な障害に膨れ上がる。約束をすっぽかす、財布をなくす、締め切りを忘れるなどして、信頼を失い、彼らの王国は崩れてしまう。

3.物事をだらだらと先送りしたり、仕事に取り掛かるのが困難

4.沢山の計画が同時進行し、完成しない
1つの仕事を延期しつつ、次の仕事にとりかかる。一日の終わり、一週間の終わり、一年の終わりには、数えきれない仕事に着手しているが、そのうち完成したものはほとんどない。

5.タイミングや場所や状況を考えず、頭に浮かんだことを、パッと言う傾向
1つの考えが浮かぶと、口に出さずにはいられない。子供じみた気分の激しさが、気配りや策略を上回る。

6.常に強い刺激を追い求める
常に何か新しいもの、集中できるもの、心のなかのつむじ風に追いつける外界の刺激を探し求める。

7.退屈さに耐えられない
千分の1秒間退屈を感じると、ただちに行動し、何か新しいものを見つけて、チャンネルを切り替える。

8.すぐに気が散り、集中力がない。読書や会話の最中に心がお留守になる。時として、非常に集中できる

9.しばしば創造的、直感的かつ知能が高い
しばしば非常に独創的である。無計画で散漫でありながら、才能のひらめきを見せる。

10.決められたやり方や「適切な」手順に従うのが苦手
何かを決められた通りにやるのは退屈で、新しいやり方を好む。

11.短気で、ストレスや欲求不満に耐えられない
常に刺激を求めるために短気になり、人には未熟、欲張りに映る。

12.衝動性
言葉あるいは行動面、金銭の使い方、計画の変更、新しい企画や職業の選択において衝動性が高い。

13.必要もないのに、際限なく心配する傾向

14.不安感

15.気分が変わりやすい
激しい揺れだが、躁うつ病やうつ病ほどにはひどくない。

16.気ぜわしい
うろうろ動き回る、貧乏ゆすりや指鳴らし、座っている間しょっちゅう姿勢を変える、足を組み直す。

17.耽溺の傾向
酒、ギャンブル、買い物、過食、働き過ぎなど、1つの活動にのめり込む。

18.慢性的な自尊心の低さ

19.不正確な自己認識
自分が他人にどんな影響を及ぼしているか、正確に推し量れない。

20.同様、あるいは似たような家族歴がある
遺伝と関係があると見られている。

『誤解されやすいあなたに――注意欠陥・多動性障害との付き合い方 へんてこな贈り物』(エドワード・M・ハロウェル、ジョン・J・レイティ著/司馬理英子訳 インターメディカル刊)より抜粋

ずばりA医師にあてはまる項目は多いが、逆に、誰もが強弱の違いこそあれ、持っている要素でもある。A医師のような成功例はめずらしいかもしれないが、学校や職場で、本人も周囲も困っているケースは少なくないはず。

「ADHD脳」とそうではない脳の違いは一体何か。
また、身近に「ADHD脳」の人がいる場合、周囲の人間はどう考え、接したらいいのか。

発達障害専門のクリニックで治療に当たっている司馬理英子医師に、さらに詳しく聞いてみた。

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