過労自殺の構造分析から、まさかのおネエ産業医ミステリーまで!? 「働き方改革」に効く話題本・5選

Opinion

2017.07.19 Wed.  黒沼由紀子

「働き方改革」なるワードがメディアを席巻するものの、どうにもこうにも“自分ごと化”が追いつかない方も多いはず。「働き方改革」「健康経営」の守備範囲の広さを考えると「さもありなん」です。そこで、今回は「働き方改革」を考えるスタートにオススメの本を選りすぐり。メディアでひっぱりだこの有名産業医による新刊から、職場の発達障害対応、はたまた産業医が主人公の本格派ミステリーまで「ここ、気になっていた!」が見つかるラインナップでご紹介します。

1)なぜ過労自殺は繰り返されるのか? 有名産業医が分析する「うつ」や「過労自殺」に社員を追い込む職場のリアル

『産業医が見る過労自殺企業の内側』(集英社新書)– 2017/6/16 大室正志著

なぜ、過労自殺の悲劇はなくならないのか。なぜ、職場のうつは増加しているのか。約30社の産業医を務める筆者が、社員を追い込む職場の構造を解き明かす。うつに追い詰められやすい社員とはどんなタイプなのか? 社員をうつや自殺に追い込む会社の問題点とは? さらには、テクノロジーが発達し、脳がかつてない疲労状態にある現代だからこそ生じるリスクとは? 2016年の電通新入社員自殺事件を例にした解説を読み進める中で、自分の中にもメンタルを追い詰められるリスク、反対に他者のメンタルを追い詰める危険性が潜んでいることをも自覚させられる。のべ数万人の社員を診てきた筆者が講じる、過労自殺を防ぐ個人、そして組織の対処法とは――働く全ての人必読。

2)職場の発達障害を考える

『「はたらく」を支える! 職場×発達障害』(南山堂)– 2017/5/17 五十嵐良雄編著

近ごろよく耳にするようになった「ADHD」は発達障害のひとつ。周囲になじめず、同じミスをくり返してしまう社員がいたら、それは発達障害かも? 企業の産業医としての立場からみる発達障害についての知識・対応や、専門外来との連携など、著者らが実施しているリワークプログラムなど、数多くの事例とあわせて紹介。編者は2005年より復職のためのリハビリテーション専門施設を開設し、リワーク支援のパイオニアとされるメディカルケア虎ノ門院長。

3)働き方改革のプロによるモチベーションマネジメント

『働く人改革 イヤイヤが減って、職場が輝く! ほんとうの「働き方改革」』(インプレス)– 2017/6/16 沢渡あまね著

働き方改革に新視点! 残業を減らすというような「働き方」を変えるのではなく、社員という「働く人」を変えることを掲げ、職場でのコミュニケーションにフォーカス。ワクワク働けるような「主体性を育む職場作り」のために企業が取り組むべき3つの改革を解説する。改革を推進する側と現場側、双方の声や温度差を手がかりに解決策を導き、改革を持続させるコツも紹介。ヤフー、ナムコ、ヤマハ発動機など企業10社、14の事例を掲載している。著書は職場改善のプロ、「業務改善・オフィスコミュニケーション改善士」。近著『職場の問題地図』は2017ビジネス書大賞にノミネートされた。

4)フィクションとは思えない迫力! 実話なのでは? というウワサも。産業医が主人公の企業ミステリー

『非風化: おネエ産業医 寒桜剛の探偵日記 Kindle版』美吉ほむら著

産業医の目線から企業の闇をあばく半沢直樹風ミステリー。舞台は東亜化薬という化学薬品を取り扱う企業。あるとき、社員が過労により自殺したが労災が認められず、事態を見極めようとした産業医は数日後に事故死した。その後も関連する人たちが事件に巻き込まれ……死亡した産業医の友人で、同じく産業医の寒桜が真相を究明していくが、彼はヘビースモーカーでスキンヘッド、バツイチ子持ちでLGBTという異色人物。産業医の業務内容や医師としての心構えなども細かく描写されているのが興味深い。よほど現場を熟知しているのか、ひょっとすると実話かも? というウワサも。

5)メンタル不調の当事者や家族、人事担当者や産業医、精神保健福祉士などあらゆる立場の方に

『メンタル不調者のための復職・セルフケアガイドブック』(金剛出版)– 2016/11/7 櫻澤博文著

職場のメンタル不調についての基礎知識はもちろん、うつ症状をこじらせない工夫をケース別に紹介。メンタル不調による休職社員の復職訓練や休職中の過ごし方も段階的かつ実践的に示されている。メンタル不調の予防・支援については産業医側、学校や人事側など立場を変えて説明。科学的根拠と、産業医である著書自身の経験を踏まえたリアルな提案は、メンタル不調の当事者はもちろん、人事や家族、産業保健に関わる人々など多くの人の指針となる。発達障害やプレゼンティーイズムについての最新知見も。

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「働き方改革」というと、壮大すぎるテーマにしり込みしてしまうもの。これらの本との出会いが、「働き方」にまつわる課題を自分自身の問題として捉えなおすきっかけとなりますように!

Writer Profile

黒沼由紀子 Yukiko Kuronuma

フリーランス編集ライター

シンクタンク勤務後、語学系出版社、女性月刊誌のライターを経て、現在は医療系メディアの編集・ライティングを手がける。理工学部応用化学科卒。

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