「声」で心の健康を見える化! 従業員のメンタル不調を未然に防ぐ「音声こころ分析サービス」

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2017.09.27 Wed.  奥田由意

「ストレスチェック制度がスタートし、高ストレス者判定は行われるようになったが、年に1度では不十分」「実態と異なる回答をする従業員もいるため、ストレスチェックはなかなかうまく機能していない」「メンタル不調が起こってからではなく、予兆をつかみ未然に防ぐことができたら…」

そんな人事部門や健保組合担当者の課題を解決する可能性を秘めたサービスが、日立システムズの「音声こころ分析サービス」だ。スマートフォンなどで日々自分の声を録音し、それをクラウドに送って分析し、わずか15秒で心の状態とその変化を捉えることができる。それにより、メンタル不調の予兆を発見し、早期の予防に繋げられるというわけだ。

声から心の状態がなぜわかるのか。その分析の仕組みは?また、開発の背景や、さまざまな運用方法の可能性や今後のサービス展開について、同社山下兼一氏(産業・流通情報サービス第一事業部第一システム本部第一システム部第三グループ主任技師)と吉田慶太郎氏(産業・流通営業統括本部第一営業本部第三営業部第五グループ)に聞いた。

左:吉田慶太郎氏(産業・流通営業統括本部第一営業本部第三営業部第五グループ)、右:山下兼一氏(産業・流通情報サービス第一事業部第一システム本部第一システム部第三グループ主任技師)

――心の状態を見える化するサービスを開発しようと考えられた経緯について教えてください。

吉田(敬称略、以下同) 弊社は「音声こころ分析サービス」に先立ち、「疲労・ストレス測定システム」という自律神経のはたらきを数分で測定し数値化するサービスを提供しています。数値化した交感神経と副交感神経のバランスや活動量の状態から疲労やストレス度を評価し対処法をアドバイスするシステムです。

製品化のきっかけは「東日本大震災」でした。現地では避難生活を続けている方々だけでなく、不眠不休で復興活動にあたっている自治体の職員も疲弊していました。こうした状況の中で本人も気づいていない心身の変調を早期に発見し、対処できれば、ストレスによる慢性疲労の予防に貢献できると考えたのです。

疲労・ストレス測定システム

――その機器は現在も使われているのですね。

吉田 被災地の自治体のほか、予防医療に力を注ぐ自治体や病院・健診センター 、「かかりつけ薬局」で地域貢献を実践されている調剤薬局などに医療機器として導入されています。また、食品・サプリメント・自動車メーカーやリラックス・癒しグッズを開発しているメーカーなどに、効果を検証するツールとしてご利用頂いています。

2015年12月から「ストレスチェック制度」が施行されるなど、健康管理が社会的な課題となっている中、お客さまからの多様なニーズに応えるために情報を収集していた際に東大COIから紹介されたのが、MIMOSYS(音声未病分析技術)でした。MIMOSYSは、PST株式会社が開発し、東京大学大学院医学系研究科音声病態分析学の徳野慎一先生が検証されている声からストレスを分析できる技術です。スマートフォンの普及が進む中、すでにお持ちのスマートフォンで手軽に日々の心の健康状態をモニターできる点にニーズがあると考え、MIMOSYSの社会実装を日立システムズが担いました。本年6月に企業向けのサービスとしてリリースし、価格は利用者1人あたり月額300円~で提供しています。

↑「音声こころ分析サービス」の紹介動画。利用イメージや、分析の仕組みが解説されている。

――声で心の状態がわかる仕組みについて教えてください。

山下 声の周波数を解析して、心の状態を見える化します。脳はストレスを受けると、感情をつかさどる大脳辺縁系からさまざまな信号を発します。その信号は、神経を通じて声帯にも送られ、声帯が不随意に緊張するため、声の周波数が変わるのです。緊張すると自分ではどうしようもなく、声がうわずったり、固くなったりしますよね。この自分でコントロールできない不随意の声帯の変化を声の周波数の変動パターンとして測定し、分析します。発話時点の心の状態、元気さの度合いを「元気圧」として表し、それを一定期間累積して分析した長期的な心の元気さの傾向(上昇・安定・下降)を「活量値」として表します

――具体的にどのように使うのでしょうか。

山下 音声を録音するために、スマートフォンなどに表示される、「日本で一番高い山は富士山です」といった例文を読み上げ、その音声データをクラウドに送って分析することで結果が表示されます。分析時間は約15秒です。録音した時点の「元気圧」と、蓄積したデータを分析した「活量値」から時系列でメンタルヘルスの状態の変化を追うことができるため、毎日チェックすることによって不調の予兆に気付きやすくなり、悪化を未然に防ぐきっかけになります

――毎日声を録音することで、データが蓄積されればされるほど、不調を検知する精度も上がるのですね。

山下 まずは、2週間程度のデータを蓄積すると、本人の傾向が見えてきます。継続的に、なるべく同じ時間帯に測定することで、自分のデータが集まり、その平均値との乖離で心の不調を早期に発見できるというわけです。
うつなど気分障害の総患者数は年間112万人(2015年12月厚生労働省発表)、休職者1人あたりの社会損失は年間422万(内閣府調査)です。継続してデータを取り、不調を早期に察知できれば、休職する前に、適切な対処ができるはずです。

――メンタル不調の予兆があると検知された従業員を、組織としてはどのように把握するのでしょうか?

山下 大勢の利用者をモニターする管理者を設定して、メンタルヘルスが悪化していると推定される状態が続く利用者がいると自動的にアラートを送るしくみもあります。この機能を活用し、管理者は対象者にどのような対応が必要か早期に検討でき、必要に応じて産業医や専門医への相談につなげることも可能です。直属の上司ではなく、総務部門や人事部門、産業医など、第三者的な立場の人に管理者権限を与えるなど、情報の開示範囲の方法は各社ごとで自由に変えられます。部署ごとにデータをダウンロードすることもできるため、個人の状況、組織の状況を分析することにも使えますね。

――アラートの出る目安はどうなっているのでしょうか。

山下 自由に設定できますが、推奨値としては

  • 5日以上連続で「活量値」が下降
  • 7日で20ポイント以上「活量値」が下降
  • 「活量値」20ポイント以上下降が3日以上連続

でアラートを出す設定にすることを奨めています。

――使用されている企業が実感されている効用などはいかがでしょうか?

吉田 7月からスタートしたばかりのため、数値的な効果はまだこれからですが、トライアルでご利用いただいている企業からは、「コミュニケーションが活性化した」との声をいただいています。心の状態については触れにくい雰囲気もありますが、毎日測定することで、そのことを職場で話題にしやすくなり、ひいてはメンタルについて相談しやすい環境づくりに繋がると思います。今後は、「活量値」の状況からサポート面談をする従業員の優先順位をつけたり、面談後も「活量値」の経過を追って適切なサポートを設計していくことで、メンタル不調によって休職する社員が減少するという結果が得られるようになればいいですね。

――どんな業種や職種での引き合いが多いのでしょうか。

吉田 業種を問わず反響をいただいています。7月末に出展した展示会でも、多くの方にブースにお立ち寄りいただきました。あらゆる業種でお使いいただけると思いますが、ストレスの多いコールセンターや変則的なシフト勤務や業務量に波のある職場、また外回りが多い職種や客先常駐、在宅勤務などでなかなか社内コミュニケーションが取りにくい職場などで特に有効なのではないかと思っています。

このサービスは診断でも医療機器でもありませんが、体温計や血圧計のように、数値として心の状態を記録することができるので、医師が診断を行う前に参考にするデータのひとつにもなりうると考えています。すでに神奈川県や鎌倉市で試験的に導入いただいているほか、医師が患者の状態を把握する支援ツールとして新六本木クリニックで正式に導入いただいています。

新入社員の心のサポートとして導入を検討されるケースもありますが、それが従業員が健康に意識を傾けるきっかけとなり、不調者の減少や生産性の向上に繋がることで「健康経営」や「働き方改革」を進める契機になれば何よりです。

――今後の展開について教えてください。

吉田 導入先の休職率やメンタル不調者が実際に減ったり、生産性向上の実績として数字を出せればと考えています。またさまざまなデータとの連携、復職プログラムへの組み込みなどを含め、メンタルヘルスを向上させる大きな円環のなかの役割のひとつとして機能させることを目指します。

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Writer Profile

奥田由意 Okuda Yui

フリーランスライター

ビジネス書の出版社ダイヤモンド社勤務ののち独立。ダイヤモンド社出版物やダイヤモンド・オンライン、プレジデント社の「プレジデント・ウーマン」などで記事執筆。誠文堂新光社のデザイン雑誌「アイデア」などで翻訳も手がける。

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