休職率ダウンに期待大! “ネット医務室”「first call」が従業員の健康を守る

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2017.09.06 Wed. 

健康経営といわれても、忙しい従業員をどう健康にすればいいのか――。人事や健康保険組合担当者の頭を悩ませる課題を解決する切り札となるサービスが、医師によるオンライン健康相談サービス「first call(ファーストコール)」だ。運営するのは、医師専用コミュニティサイトなど医療情報サービスを提供しているメドピア。医師たちが開発した健康相談サービスの狙いとは。そして、企業や健康保険組合、従業員にもたらされるメリットとは――。「first call」立ち上げメンバーである株式会社Mediplat(メドピアグループ)メディカルアシュアランスチーム・チームリーダーの眞鍋歩氏(医師・医学博士)に話を伺った。

株式会社Mediplat(メドピアグループ) メディカルアシュアランスチーム  チームリーダー 眞鍋歩氏(医師・医学博士)

――医師によるオンライン健康相談サービス「first call」とは、どんなサービスなのですか。

PCやスマートフォンなどを使ってオンラインで医師とつながり、匿名で健康・医療相談ができるサービスです。現在、50名ほどの医師が参画し実名で相談に対応してくださっています。相談はチャット形式とテレビ電話形式があり、相談科目は内科、小児科、産婦人科、精神科、眼科、整形外科、外科、がん診療科、耳鼻科、泌尿器科、皮膚科の11科目 です。2016年9月からチャット相談を主軸にサービス展開し、モニター利用でサービスの研鑽を積んできました。モニターを中心としたこれまでの相談件数は2017年6月時点で3万件を超えていますが、その蓄積したデータから、いかに多くの方々が日常的な身体の悩みを抱えているか、そしてどんな悩みが多いのかといった傾向が見えてきています。

――相談の流れを教えてください。

チャット相談は、スマートフォン、パソコンのどちらからでも、24時間365日いつでも何度でも相談可能です。相談したい科目を選んで相談内容を記載すると、専門の医師が24時間以内に回答しますが、おおむね2時間から3時間以内には回答されています。その後回答があった医師と2回までのやり取りができます。またテキストだけでなく写真添付もできるので、皮膚などの状態を見てもらうこともできます。

テレビ電話相談はパソコンからのみ相談可能です。科目と日時を選んで予約を取り、問診票を記入。予約日時になったらテレビ電話を起動して相談を行います。1回の相談時間は最長15分です。

――「first call」開発のねらいを教えてください。

医療費が40兆円を超えて増大するなか、今後求められる医療の形として、予防医療に重点を置いた取り組みの重要性を感じていました。予防医療が機能すれば、そもそもの発症を抑えることができるからです。そこで発症してから病院を受診、治療するという従来の医療の形から、発症に至る前段階で気軽に健康相談をしてもらい、発症のシグナルを感知し、適切な受診を促したり生活指導をしたりすることで発症そのものを抑えたいと思っています。忙しい現代人は、なかなか受診機会をつくることもできません。そこに気軽に医師に相談できる「first call」が入口となることで、医療アクセスへの間口を広げ、予防医療と医療費の低減に貢献したいと考えています。

もちろんあくまでも相談なので、薬の処方や診断といった医療行為はできません。しかし、日常的にできる対処法をアドバイスしたり、症状によっては病院を受診するように勧めています。患者は、病院を受診する際に、大学病院や市中の総合病院、クリニック、そして何科を選択したらいいのか判断に迷うものですが、まずは近所の〇〇科を受診してくださいなど、適切な医療機関への受診を促すことで、医療全体の適正化も図れると考えています。

――参画している医師はどういった思いがあるのでしょうか。

皆さん、予防医療やオンラインでの健康・医療相談に興味を持ってくださっているのはもちろんですが、「first call」によって医師から直接正しい医療・健康情報を提供することで、適切な受診勧奨を行い、医療へのアクセスをより適正で効率的なものにしていきたいという私たちの志に賛同して参画してくださっています。医師として臨床以外にも活躍の場を広げたいとの思いを強く感じます。

医師の居住地は日本全国に及び、海外在住の医師もいますが、世界のどこにいてもオンライン相談には対応できますし、医師の都合のいい時間に対応できるというメリットも参画しやすさにつながっていると思います。今後事業規模の拡大に応じて、メドピアが運営する医師専用コミュニティサイト「MedPeer」の会員とも連携を図っていく予定です。国内医師の3人に1人、およそ10万人が参加している「MedPeer」と連携し参画医師を確保できることは、我々の大きな強みでもあります。

――相談の内容や傾向はどんなものでしょうか。

これまでのモニター利用による相談では、チャットによる相談が全体の95%を占めています。その6割が女性からの相談で、相談者の年齢は20代から40代が中心です。女性の相談の特徴として、ご自身の相談以外にも親の介護や子どもの体調などについての相談も目立っています。相談科目の内訳で最も多いのは色々な相談内容を幅広く含む内科ですが、他の科目もまんべんなくあり、身体の悩みは一人ひとり千差万別なのだと感じています。いずれも病院に行くほどではないが悩んでいたという内容が多いですね。

◆相談例
小児科:赤ちゃんの首の間に汚れがあり、洗っているのですが赤く荒れています。どうすれば荒れなくなりますか?
産婦人科:熱っぽく風邪の症状があります。妊娠の可能性があり、薬が飲めないので対処法を教えてください。
精神科:外出すると人目が気になり、動悸がしたり一気に汗が出たりして悩んでいます。
耳鼻科:風邪をひいたときに、耳の聞こえが悪くなったようです。耳鼻科に行くべきか迷っています。
皮膚科:あごのニキビがひどく、一向によくなりません。
眼科:夕方になると、ソフトコンタクトレンズが片方の目だけ必ずずれてしまいます。

また、医療機関を受診した後のセカンドオピニオンとして「first call」を利用されることもあります。対面で接する主治医にはちょっと聞きにくいことを匿名で気軽に聞けるというのも、気を遣いがちな日本人の性格に合ったオンライン相談のメリットだと思います。

――回答内容のクオリティは、どのようにコントロールされているのでしょうか。

まず、参画する医師同士で、相談と回答の内容は個人情報を含まない形ですべて共有しているほか、チャット相談におけるやり取りは定期的に私や事務局でチェックしています。例えば、医学的には正しく回答していても、難しい医学用語が多用されていたり、論理的ではあるものの突き放すような言い回しがされていると、相談者に不安を抱かせることになってしまいます。顔の見えないやり取りだからこそ、ホスピタリティを持った対応は欠かせませんし、そこがサービスとしての差別化になるはずだと思っています。現状はあまりないですが、対応が不足していると見なされる場合には指摘もさせていただきます。

加えて、相談者からの回答医師へのレビュー機能もつけており、これはクオリティコントロールと同時に、医師のモチベーションにもつながっています。

――2017年5月からは在宅血液検査との連携サービスも開始していますね。

健康保険組合向けサービスとして、サンプリと業務提携し通販型血液検査キット「DEMECAL(デメカル)」と健康相談を組み合わせて提供しています。DEMECALは自宅で指先からわずかな血液を採取し、郵送するだけでできる検査で、早期がんのリスク検査、胃がんリスクABC分類検査(ピロリ菌検査)なども追加できます。「first call」との連携によって、検査結果をオンラインで確認できるようにし、さらに医師に相談ができるサービスも組み込んでいます。提携以降すでに10以上の健康保険組合に導入いただいており、疾患の早期発見のみならず、受診率が50%を切っている被扶養者の健康診断の受診促進、ひいては医療費の低減が期待されています。

――2017年6月より「first call」の法人向けサービスがはじまりました。健康保険組合や企業にとってこのサービスを導入するメリットはどこにあるのでしょうか。

従来、企業の従業員の疾病対策への医師の関わりは産業医面談に限られていますが、従業員もなかなか産業医には気軽に相談しづらく、面談するときには重症化していて、多くはそのまま休職に至ってしまうのが現状です。「first call」なら従業員は気になる症状があるときに匿名かつチャットで気軽に相談できるので、発症前や初期段階で対応できます。そのため、従業員が健康不安を抱えたまま勤務を続けることによる発症・重症化のリスクを軽減できますし、精神的な負担も減らせます。なお従業員の相談内容は、個人を特定できる形で人事にレビューすることはありません。あくまで従業員が気兼ねなく相談できる環境づくりに重きを置いているのです。ただ、企業には職場環境の改善に役立てていただけるように、今後人事向けの管理画面を提供する予定です。従業員のプライバシーには配慮した上で、全社や部門・職種別での相談内容の傾向を分析できるような機能を装備していきます。

健康保険組合と企業とでは、導入の目的は異なります。健康保険組合は、無駄な受診を減らすことや、健康意識の向上効果により健康診断受診率を上げることで、医療費を低減することを意図されます。一方企業は、福利厚生とともに、欠勤や休職を減らして従業員の生産性を上げることを期待されます。企業での産業医は主に本社にしか配置されていないので、従業員の福利厚生の平等性に欠ける面があります。そのため、「first call」のようなオンライン健康相談は、工場や営業所が点在していたり、客先に常駐している従業員が多い企業には特に有効なのではないでしょうか。海外赴任時の駐在員家族も含めた福利厚生としても活用いただいています。

――価格体系はどうなっているのでしょうか。

個人向けは月額540円(税込み)、法人向けは年間契約で月額課金制となっています。例えば、従業員規模が50名だと月額1万円以下、300名規模でも5万程度(初期設定費用は別途)なので、「安い」と評価していただいています。

――今後の「first call」が目指す姿を教えてください。

まずは相談サービスとしての「first call」の普及を最優先に運用していきながら、相談事例を蓄積していきたいと考えています。医療情報は個人の状態によって適切な情報が異なるため、ネットで検索してもなかなか自分に合う情報にたどり着けません。「first call」で医師が実名で直接その人に合った医療情報を提供することで、検索サイトでは実現できない価値を提供していきたいと思っています。相談事例が相当数蓄積し、分析されれば、医療機関や保険会社、研究機関などにもデータを提供できますし、サービスとしては将来的にはbot化も実現させたいです。最終的に回答するのは医師としても、botが医師に回答例を提示できれば、より質の高い回答が効率的に提供できるようになります。

法人向け「first call」についても、まずは事例をしっかり集め、効果測定をきちんと行いたいですね。休職率、離職率、医療費がどれだけ下がったのか。健康経営にエビデンスを提示できればと考えています。

また、相談だけでなく遠隔「診療」としても、2017年9月から北里大学東洋医学総合研究所と業務提携し、同研究所の漢方外来患者向けに「first call」を使った遠隔診療を開始しますが、これを先駆けとして遠隔診療にも参入していきたいと思っています。

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■文 坂口 鈴香

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