歯科と医科、分離している場合じゃない! 歯周病と全身疾患の密接な関係

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2017.09.13 Wed.  黒沼由紀子

日本では歯科と医科は別々のものと思われがち。しかしそこには密接な関係性があることをご存じだろうか。ホリエモンこと堀江貴文氏が「むだ死にしたくなければ歯医者へ行け」(著書『むだ死にしない技術』より)と主張するように、歯周病と全身疾患の関係性が明らかになってきている。そんな万病のもとともいえる「歯周病」予防の切り札となる最新手法が「3DS除菌」だ。その手法を紹介するとともに、歯科と医科のタッグによる日本の医療の未来を見据えてみる。

歯科と医科は別もの?

医師になるために通う大学には医学部と歯学部というすみわけがある。
どうして医学部・歯学科ではなく、歯学部として独立しているのかといえば、歴史の名残だという。昔の歯科は入れ歯や差し歯などの作製技術が重視され、技術者としての性質が強かった。大正時代に医師が歯科診療することが禁止され、歯科が医科から独立した1流れからだという。

現在の日常生活でも「“歯医者”に行く」のと「“病院”に行く」のでは別物で、インセンティブが違うように感じる人が多いのではないだろうか。
しかしながら近年、歯科と医科に密接な関係があることが分かってきている。

全身疾患の原因となりうる歯周病
罹患率が約2倍になることも

声高に言われているのは歯周病と全身疾患の因果関係だ。

歯周病とは、口腔内の細菌の感染による炎症性疾患。歯肉に炎症が起き、進行すると歯周ポケットとよばれる溝が生成される2。この溝から細菌そのものや細菌由来の病原因子、炎症の場で作られる物質(サイトカイン)が歯肉の血管を通じて血液に流れ込み、全身の組織や臓器に影響を与えることが分かってきた3

歯周ポケットから菌などが流れ込み、全身に影響を与えるとされる

たとえば、患者数・約950万人とされる糖尿病4。糖尿病の患者は歯周病を重症化しやすく、歯周病の人は歯周病でない人よりも、糖尿病の罹患率が約2倍高いとの報告がある5

高血糖により口の中が乾燥しやすく、唾液などの糖分濃度が高くなり、細菌に対する抵抗力や組織の修復力の低下によって歯周病という感染症にかかりやすくなる。すると細菌やウイルスに抵抗しようとしてインスリンの働きを阻害する「インスリン抵抗性」という状態を生じさせ、糖尿病を発病しやすくなってしまう6

ほかにも、歯周病をもつ関節痛患者は、歯周病のない患者に比較して、その後関節リウマチと診断されるリスクが約2.7倍高くなる※7というデータや、虚血性心疾患(動脈硬化)などの循環器病は歯周病にかかっている人はそうでない人に比べ1.5~2.8倍も発症しやすい※8ことがわかっている。

ホリエモン、こと堀江貴文氏は自身のノマド生活の中で、電動歯ブラシとデンタルフロスや歯間ブラシ、洗口液はつねに携帯しているそうだ。著書『むだ死にしない技術』や予防医療普及協会で、デンタルケアの重要性を主張しているように、“からだの健康は歯から”は明白な事実なのだ。

歯周病を治療・予防するには?
画期的な3DS除菌

気をつけなければならないのは、歯周病は自覚症状をとらえづらく、慢性感染症であること。インフルエンザや胃腸炎のように一時的な疾患ではなく、自然治癒もしない。治療が必要な疾患なのだ。

H26年調査によると、歯肉炎及び歯周疾患の患者数は331万5,000人、歯周病の有病率は、20歳代で約7割、30~50歳代は約8割、60歳代は約9割※9歯周病なんて関係ないと思っていたら、それは勘違いということになる。気づかないうちに症状が進行してしまうと、全身疾患の原因をつくりかねない。

そこで最近広がりを見せている画期的な治療法、3DS除菌を紹介しよう。歯周病の予防はある程度までは歯みがきでカバーできる。が、より確実な成果が現れる最新の手法だ。

3DSとは「Dental Drug Delivery System=歯に薬剤を直接届けるシステム」の略。2000年に国立感染症研究所の花田信弘部長(現・鶴見大学)などによって開発された。

患者の歯型から専用のマウスピースをつくり、そこに薬剤を注入して装着。菌に直接作用させて除菌し、歯周病を悪化させる要因・プラーク(歯垢)の定着を集中的に抑える※10。何度かの通院に加え、ホームケアは1日1回約5分。夜、歯みがきした後に専用薬剤をつけたマウスピースを装着するだけ。虫歯や歯周病になりやすい人だけでなく、治療痕の多い人、矯正治療を始めようと思っている人に特におすすめだという11

現在、実施できる医院は、全国で200を超えている12。医院によって金額は異なるが、3~5万円で可能なところが多いようだ13

3DS除菌を行うことで口腔内の細菌が減少。それに伴い、血管内に流れ込む細菌も減り、血液状態がよくなり、慢性肝炎や血糖値が改善されることが科学的にも実証されている14

歯科と医科のさらなるつながり
生活習慣病予防だけじゃない、再生医療の領域へ

歯周病は生活習慣病のひとつ。関係が深いとされる糖尿病も動脈硬化も同様に生活習慣病。これまでは運動不足や食事の内容、精神的なストレスが主な要因とされてきた。が、デンタルケアのクオリティも危険因子のひとつとされるようになってきている。

万病のもととなる歯周病を予防する動きが広がりを見せたなら、国の医療費削減にも大いに貢献するだろう。
もう一つ、歯科と医科が切り離せない分野がある。

歯髄バンクをご存じだろうか。歯の神経の中には良質な幹細胞(細胞のタネ)が含まれているため、乳歯や親知らずを再生医療に活用できるというのだ。臍帯血や骨髄から幹細胞を採取するより手軽で、増殖能力が高く、iPS細胞を作りだすことさえ可能だという。詳しくはこちらの記事を読んでいただきたい。>>>歯、血液、病変組織、尿も捨てるべからず ――バイオバンクが拓く未来【Vol.1 歯髄細胞バンク】

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参照資料
※1:長崎県歯科医師会「歯の歴史博物館」http://www.nda.or.jp/study/history
※2:日本臨床歯周病学会「歯周病について」http://www.jacp.net/perio/about/
※3:日本歯科衛生士会「歯周病が及ぼす全身への影響」https://www.jdha.or.jp/health/topics1-1.html
※4:日本生活習慣病予防協会「糖尿病の調査・統計」http://www.seikatsusyukanbyo.com/statistics/2013/003582.php
※5、6:糖尿病ネットワーク http://www.dm-net.co.jp/okuti/2004/02/002.php
※7:京都大学「歯周病と関節リウマチ発症との相関を示す」http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2015/150413_1.html
※8:国立循環器病研究センター循環器病情報サービスhttp://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/general/pamph105.html#anchor-3
※9:日本生活習慣病予防協会「歯周病」http://www.seikatsusyukanbyo.com/statistics/disease/periodontal/
※10:口腔除菌協会「歯の健康ステーション」http://www.kenko-station.jp/3ds/index.html
※11:http://www.hayashi-dental.com/info_care/3ds/
※12:鶴見大学歯学部 探索歯学講座「3DS実施歯科医院・歯科医師のご紹介」http://tansaku.tsurumi-u.ac.jp/3ds_contact
※13:http://cost.ha-channel.net/itirann.shtml
※14:口腔除菌協会「歯の健康ステーション」3DSセラピーhttp://www.kenko-station.jp/3ds/therapy.html

Writer Profile

黒沼由紀子 Yukiko Kuronuma

フリーランス編集ライター

シンクタンク勤務後、語学系出版社、女性月刊誌のライターを経て、現在は医療系メディアの編集・ライティングを手がける。理工学部応用化学科卒。

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