トイレが自動でお尻拭き、転倒による骨折を予防する国産ジーンズ……アイデアが光るプロダクト 「国際福祉機器展」レポート

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2017.10.19 Thu. 

ハンドメイドの自助具から最先端技術を活用した介護ロボットまで――福祉機器の現在から未来が一堂に会したアジア最大級の展示会「国際福祉機器展(H.C.R.2017)」(主催:全国社会福祉協議会、保健広報協会)。今回は地域でものづくりに取り組む企業が、現場の声をアイデアに反映させたプロダクトを紹介する。

まるでシーソーのような心地よさ!?
てこの原理で移乗介助を楽にする「リフティ・ピーヴォ」【エナジーフロント】

エナジーフロント代表の上田剛慈氏は、大学院で電気界面化学を学び、半導体メーカーに勤務、その後東京大学でテラヘルツ単一光子検出器開発プロジェクトの研究スタッフとして開発に携わった経歴を持ち、再生可能エネルギーを軸に同社を設立した。AUN事業部は上田氏自身の介護経験をもとに、介護する側・される側の困りごとを解決したいと岡山の地場産業であるジーンズや帆布を使って、“介護用品らしくない”ものづくりに取り組んでいる。上田氏の研究者の視点も加え、「先端技術×産業連携×地域活性」による相乗効果を狙う。

なかでも、腰痛の原因の7割を占める移乗介助に着目。高額で、移乗時間もかかるリフトを利用するのではなく、介護現場の実態に即したものを提供したいと開発したのが、「てこの原理」を応用した移乗介助ベルト「リフティ・ピーヴォだ。クッション部「リフティ」と、膝折れ防止具「ピーヴォ」をつなげて使う。介助者が「力点」、要介護者が「作用点」、ピーヴォが「支点」となり、介助者の体重移動によりシーソーのように要介護者が持ち上がるというわけだ。介助者の腕や腰の力を使わないので、女性一人で体重の重い男性の移乗介助もできる。要介護者も包み込まれる感覚で、安心して介助者に身を任せられる。

腰に負担をかけずに、体重移動だけで移乗介助ができる

目を引くのは、赤やオレンジ、デニムといった鮮やかな色彩だ。介護用品に見えないデザイン性はこれまでの介護用品にはなかった視点だと上田氏は自負する。また介護業界では敬遠されてきた布製品だが、「リフティ・ピーヴォ」は超撥水処理されているので、水濡れに強く、簡単な汚れはさっと拭き取るだけで済む。シャワー介助でも使用できるし、洗濯も可能だ。また200キロ以上に耐える丈夫な生地は、国産ならでは。

コンパクトなので持ち運びもしやすい

装着型ロボットなど、介護にかかわるテクノロジーの進歩はめざましい。エナジーフロントの「AUN」シリーズはどれもアナログだが、「リフティ・ピーヴォ」が応用する「てこの原理」はテクノロジーの原点ともいえるだろう。

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介護にファッション性を!
転倒時の骨折リスクを軽減する「プラスパッドジーンズ」【エナジーフロント】

AUN」シリーズから、ジーンズ発祥の地、倉敷・児島産デニムを使ったユニバーサルデザインのジーンズも紹介したい。「ライフスタイルの観点で、介護する側、される側がともに楽しめるものづくりをしたい」と生み出したものだ。

リフトアシストジーンズ」は、持ち手がついて、移乗介助を楽にするジーンズだ。前述の「リフティ」と同じ原理で、ジーンズと一体化している。介護器具ではあるが、まったく介護用品には見えないデザインだ。前面はストレッチジーンズなので、履き心地も良い。

持ち手がデザインのアクセントに

プラスパッドジーンズ」は、大たい骨骨折を予防するヒッププロテクターが内側に装着されている。この衝撃吸収パッドは体温で適度の柔らかさを保つので、着用しても違和感はない。これまで同様のパッドを入れた女性用下着はあったが、「自分だったら着用したいか?」という観点から、おしゃれとして楽しめる男女兼用ジーンズを企画したという。

ファッション性だけではない。このジーンズは、医療福祉分野や工学分野の審査委員会によるきびしい審査を経て、日本転倒予防学会の推奨品にも選ばれている。科学的根拠に基づいた転倒予防ジーンズなのだ。

衝撃吸収パッドは(株)カネカと芝浦工業大学が共同開発したもの

さらに福祉関連事業に力を入れる熊谷組と共同で、歩行支援器とセットで使用するスリングジーンズも開発した。従来歩行支援器にはハーネスという器具を組み合わせていたが、ファッション性を維持しながら介助を楽にしたいと考える熊谷組とのコラボが実現した。

リフティ・ピーヴォ
リフトアシストジーンズ
プラスパッドジーンズ・チノパン
http://www.aun.blue/

世界初! ロボットアームがお尻を拭き取る
「楽々きれっと」【岡田製作所】

福祉機器の未来を感じる「福祉機器開発最前線」会場では、世界初の排せつ支援ロボット「楽々きれっとが来場者の関心を集めていた。

岡田社長自身の介護経験から気になっていた排せつ後の拭き取りについて、整形外科医師と会話したことがきっかけとなり開発に着手。介助者に遠慮や気兼ねをすることなく、トイレで排せつができること、そして介助者の精神的、身体的負担を軽減することを開発コンセプトに、1号機を国際福祉機器展に出展したのが10年前。以降、改良を重ねながら6号機が完成した。

トイレに入ると人感センサーにより自動で便座が昇降し、移乗しやすい高さに調整する。排せつ後は、臀部の形状に合ったロボットアームが作動しお尻を拭く。人の手を模倣したロボットアームを開発するため、倫理審査を受けて社員の臀部を計測。最適なロボットアームのヘッド形状を実現した。またどれくらいの力を押し当てれば拭き取れているのか、“拭き取り率”についても社員が協力し、研究調査を実施。拭き取り感も向上したという。

拭き取る位置と強さが変えられる

「楽々きれっと」は、メーカーを問わずすべての洋式水洗トイレに設置可能だ。今後は量産に向けて、スタイリッシュかつコンパクトにして実用化したいと意欲を見せる。

岡田製作所は、もともと自動車関連部品メーカー。「楽々きれっと」の開発に、これらの技術が直接生かされたわけではないとのことだが、ものづくりのDNAが発揮されているのは間違いない。2009年には大阪の活力と賑わいある地域づくりを目指す「おおさか地域創造ファンド」の承認を、2011年には「大阪ものづくり優良企業賞」を受賞するなど、地域活性化にも貢献している。2015年には国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の、ロボット介護機器開発・導入促進事業「排せつ支援分野」に採択されている。

楽々きれっと
http://robot-benza.com/product

■文 坂口鈴香

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