謎に顔が痛い、歯は悪くないのに歯が痛い、口腔顔面痛を知っていますか?

Opinion

2017.10.30 Mon.  木原洋美

首から上の謎の痛みは、
ほぼ口腔顔面痛

“隠れ患者”はかなりの数に上るのではないか――と推察される疾患に「口腔顔面痛」がある。疾患の知名度は低いが、その実態を知れば、(もしかしたら自分も)と思い当たる人は少なくないはず。

口腔顔面痛とは、歯痛、歯肉痛を含めて舌、口腔粘膜の痛みなど口の中のいろいろな痛み、顎の痛み、顔の痛みなど全般の総称で、「首から上の謎の痛みは、ほぼ口腔顔面痛」ともいわれる。
患者は圧倒的に女性、特に50代から60代が多い。

場所的には、病態にかかわらず、眼窩外耳孔線(目じりと耳の穴の中心を結ぶ線)より上に感じる痛みは頭痛、それより下で頸部(首)より上、耳たぶより前方の痛みは「顔面痛」と規定されている。(国際頭痛分類による)

ただし、頭痛のなかでも患者が最も多い緊張型頭痛などは、口腔顔面痛の一種と考えられている。ポピュラーな病気である顎関節症も含まれる。

また、医療現場では、歯、口腔、顔面の痛みの中で診断が難しい、なかなか治らない痛みを指すこともある。例えば以下は、この疾患のスペシャリストであり、日本口腔顔面痛学会・元理事長の和嶋浩一氏(慶應義塾大学病院歯科口腔外科口腔顔面痛外来)のもとを同大・神経内科からの紹介で受診した患者・A子さん(40代)の訴えだ。

患者の訴え
「7か月前から下の奥歯が痛むようになり、近所の歯科クリニックを受診したが「異常なし」。少しして、頭痛も併発したため神経内科を受診したが「脳に異常なし」。様子を見ることにしたものの、3ヶ月目以降は、夜、痛みで目覚めるようになり、鎮痛剤を服用しないと熟睡できない状態に。

4カ月目、再び歯科クリニックを受診し、「なんとかしてほしい」と懇願。左下奥歯の神経を抜く治療を受けたが、痛みは全く取れないまま、歯、頭、顎、首に広がり、現在に至る。

5か月目、周囲から「歯が原因ではなく、神経からくる痛みかも」と指摘され、ペインクリニックに相談。首のレントゲンを撮るも「異常なし」。帯状疱疹後疼痛の疑いもあると血液検査を受けたが、数値は微妙で「断言できない」とのこと。週一回のペースで首に神経ブロック注射をしてもらう治療を開始したが効果は実感できない。

現在、1日3回、鎮痛薬を服用しているが、痛みが和らいでいるかどうか判らなくなっている。リンパの腫れや発熱といった症状はない。
痛みの強度は、気にならない程度から中等度まで。自分ではもう、具体的にどこが痛いのか、分からない。
歯が痛くなるときは肩こり、首のこりを強く感じる。また、頭が痛くなるときもある。
冷湿布および入浴をすると痛みが楽になる。」

――長く続く、原因不明の顔の痛み。歯科でも神経内科でも、ペインクリニックでも“歯が立たなかった”痛みを和嶋氏はどう診断し、治療したのか? 回答は後半で明かすとして、まずは「口腔顔面痛」の基礎知識と、この疾患をめぐる発展途上の現状をご紹介する。

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