謎に顔が痛い、歯は悪くないのに歯が痛い、口腔顔面痛を知っていますか?

Opinion

2017.10.30 Mon.  木原洋美

症状――最多は歯痛
次いで顏、歯肉、顎

日本口腔顔面痛学会・元理事長 和嶋浩一氏

A子さんの場合、頭から首まで、顔のすべてが痛んでいる印象だが、一般的な口腔顔面痛の症状はどのようなものなのだろう。(以下、「 」内はすべて和嶋氏のコメント)

「当外来の統計で最も多いのは、歯の痛みを訴える患者さんで34%です。次に顔面痛(25%)、歯肉の痛み(14%)、顎関節痛(10%)と続きます。口腔顔面痛外来は、あまり聞きなれない外来ですから、難しい病名の患者さんが多く集まっているだろうと思っていましたが、難しい病名の患者さんは比較的少なく、歯や歯肉が痛いという、一般的な訴えの患者さんが約半数を占めていました」

つまり、歯が痛いと訴えて受診し、痛みの理由が不明なまま神経を抜く。抜歯。それでも痛みは消えず、今度は歯があった歯肉の部分に痛みを感じる、という人がこれだけいるというわけだ。

「患者さんは皆さん、最初に歯痛を感じてから、平均1.5年が経過し、平均3軒の医療機関を経て当外来を受診しています。複数の医療機関で『異常が無い』、『原因不明』との診断を受け、徒に抜歯されるなど、納得のいかない治療をされて、改善を求めて次の医療機関を受診する、の繰り返しの果てに、ようやく口腔顔面痛の知識のある歯科医師に巡り会って紹介を受けたり、ホームページ等で口腔顔面痛外来を探しあてて受診されるのです」

ほとんどは筋肉と神経の
異常から来る非歯原因性歯痛

そうして、患者はついに、自分を苦しめてきた痛みの正体を知るのだが。

一番多いのは、非歯原性歯痛、要するに歯科的原因によらない歯痛です。痛みを感じる歯には何も原因がなく、痛みを感じる歯と離れた部分に歯科疾患とはまったく異なる異常があって歯痛を生じさせている。

非歯原性歯痛を引き起こす疾患は8つに分類されていますが、最も多いのは『筋・筋膜性歯痛』といわれる筋肉のコリによる痛みです。これだけで約5割を占める。肩こりが強いときに頭が痛くなったり、歯が痛くなったりすることは知られていますよね。それと同じように、咬筋(ほほ)、側頭筋(こめかみ)、胸鎖乳突筋(首)が筋・筋膜疼痛という状態になると、離れた所にある歯に関連痛として痛みが感じられることがあるのです。

次いで多いのは、何らかの原因で神経が障害されて鈍麻と共に過敏症状がでて歯痛が感じられる状態になっていることです。3割弱はこれですね。たとえば下の顎にインプラントを入れたり、親知らずを抜いたりした際に神経が傷つけられ、感覚が鈍くなるだけでなく、過敏になることがあります。痛みは過敏症状の一種なのです。帯状疱疹によって三叉神経が壊されて、痛みが起きていることもよくあります。帯状疱疹というとブツブツが出た後で痛みが残るというイメージがありますが、顔の場合、ブツブツができなくても神経が障害されていることがあります。患者さんは、まさかと思うようですが…」

非歯原性歯痛の原疾患による分類

  1. 筋・筋膜性歯痛(筋肉のコリによって)
  2. 神経障害性歯痛(三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛など)
  3. 神経血管性歯痛(片頭痛、群発頭痛など)
  4. 上顎洞性歯痛
  5. 心臓性歯痛(心筋梗塞や狭心症)
  6. 精神疾患または心理社会的要因による歯痛(身体表現性障害,統合失調症,大うつ病性障害等
  7. 特発性歯痛(非定型歯痛を含む)
  8. その他の様々な疾患により生じる歯痛

正しい診断なくして、病気を治すことはできない。痛みの原因がはっきりしたところでようやく、本当の治療は始まるのである。

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