あの大物も再起をかけた日本一のリハビリテーション病院――進化するリハビリテーション医療1

Opinion

2017.11.24 Fri.  木原洋美

都心にこそ、まっとうなリハ病院が必要

病棟の窓からは、新宿副都心の摩天楼が驚くほど近くに感じられる。ここ『初台リハビリテーション病院』は都心の一等地に建てられた、日本初の本格的なリハビリテーション病院だ。それまでのリハビリテーション病院といえば、都会から遠く離れたリゾートや温泉地にあるのが常識だった。しかし石川誠医師には信念があった。

「リハビリは、救命した直後からスタートし、退院後も通所で続ける必要がある。そのためには急性期の病院の至近に、まっとうなリハビリテーション病院を建てなければならない」

結果、2002年に開所した同院には、長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督はじめ、サッカー日本代表のオシム元監督や自民党の谷垣禎一元幹事長など、多くの大物たちが再起をかけて入院し、目覚ましい回復を遂げてきた。

医療の進化と共に変わってきたリハの常識

“目覚ましい回復”は断じて「奇跡」ではない。石川医師が信念を投影させて創り上げてきた「チーム医療」の力であり、彼の今日までの軌跡は、日本における本格的なリハビリテーション医療の歴史と言える。

かつて医学会には、「病人は安静に、特に脳卒中の場合は動かさずに様子をみる」という常識があった。ちゃんとした治療法がなかった時代。動かせば脳動脈瘤の再破裂を招く等、容体を悪化させるだけ。安静にして様子を見ることが、患者を生還させる最善の治療法と考えられていたからだ。

「佐藤栄作元首相が築地の料亭で脳卒中に見舞われた際も、料亭に駆け付けた医師団の『動かすな』という指示に従い、元首相が大学病院に搬送されたのは倒れてから5日後でした」

医学が進歩した現代では、「一刻も早く、専門病院へ搬送し、治療を開始する」のが常識だ。

一命を取り留めた後の対応も、大きく変化した。
過度の安静は身体・精神機能の急速な衰えにつながる。筋肉は痩せて縮み、関節は固まって動かしづらくなり、骨はもろくなって、精神・認知機能も低下する「廃用症候群」が引き起こされることがわかってきたのだ。骨折で入院した高齢者が、わずかな期間ベッドで寝ていただけなのに、足がすっかり痩せ細って歩けなくなり(2週間のベッド上安静で、下肢の筋肉は2割も委縮すると言われている)、認知症のようになってしまった…という話しはしょっちゅう聞く。

「廃用症候群の防止と機能回復の促進には、発症からできるだけ早くリハビリを開始することが必要です。しかし、リハビリテーション科がない一般病院では現在も、入院患者を安静にさせている施設が少なくありません」

ケガや急病で倒れた時、可能な限り早期にリハビリを開始してくれる病院に搬送されるか、寝かせきりにする病院に搬送されるかは、その後の人生に雲泥の差をもたらす。

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