「最先端」の医師たち――『2017 Health 2.0 Asia – Japan』レポート

Opinion

2017.12.19 Tue.  HEALTHCARE Biz編集部

医療・ヘルステック分野の新たな取り組みやプロダクト、サービスを紹介する国際カンファレンス「Health 2.0 Asia – Japan」(主催メドピア株式会社)。渋谷ヒカリエにて熱気に包まれた2日間が繰り広げられた。今回は、12月6日に行われたプログラム「『最先端』の医師たち」を紹介する。

「最先端」の医師たち
「起業家医師」が増加する医療界において、そのトレンドを牽引している医師たちがいます。彼らの目指すイノベーションとは何か、医療従事者がどのようにそこに関与していくべきなのかを語ります。

<モデレーター>
池野 文昭 MedVenture Partners株式会社 取締役チーフメディカルオフィサー
<パネリスト>
石見 陽 メドピア株式会社 代表取締役社長 CEO(医師・医学博士)
中山 俊 アンター株式会社 代表取締役
松村 雅代 株式会社 BiPSEE 代表取締役 CEO
佐竹 晃太 呼吸器内科医 株式会社CureApp 代表取締役CEO

医師が起業――。「10年前ではありえなかった状況が、ここ1~2年で医師こそ起業すべきだとの流れになってきた」とモデレーターの池野氏は指摘。“医師として、そして起業家として最先端のキャリアをひた走る4名のパネリスト”の紹介があった。

石見陽氏は、言わずとしれた起業家医師の先駆者的存在。医師専用コミュニティサイト「MedPeer」を開設し、国内医師の3人に1人以上となる10万人以上が参加するプラットフォームへと成長させた。2014年には東証マザーズに上場。「企業から14年を経て、現在は社員数も90名ほどとなった。上場した今も、週に1回は臨床を行っている。(石見氏)」。

アンター株式会社 代表取締役の中山俊氏は、2016年6月に起業したばかりの新米起業家医師。医師同士の実名によるDtoDのQ&Aサービス『AntaaQA』を運営しながら、週2回整形外科医として臨床も行っている。社員は3名。

株式会社 BiPSEE 代表取締役 CEO松村雅代氏は、異色のキャリアを歩んでいる。リクルートの営業を経て、医学部に学士編入。「心療内科医として、大人の発達障害を専門にしています」。起業家として提供しているのは、歯科VRプレパレーションで、子どもの歯科治療への不安を軽減させるサービスだ。治療を受ける子どもの頭がベストポジションとなり、口を開けたときだけ映像を流すという仕組みで治療のしやすさを実現させている。「2017年の7月に創業したばかりで、この中では一番の新参者です。心療内科としても、週1回診療続けています」。

佐竹晃太氏は、薬、医療機器に次ぐ第三の治療として「アプリでの治療」を目指す株式会社CureAppを2014年に創業。2017年10月からは、第一弾治療アプリの治験も開始している(関連記事)。会社は現在社員・アルバイトを含めて30名ほど。代表を務めながら、呼吸器内科医として、週1回外来も担当しているという。

医師がなぜ、あえてビジネスの世界へ!?

モデレーターの池野氏から「臨床のみの医師が99%の中で、なぜあえてビジネスの世界に飛び込んだのか?」との率直な問いかけがなされると、石見氏は「かっこいい理由とかっこ悪い理由がそれぞれある」と告白。石見氏が起業を考え始めた約14年前はホリエモンこと堀江貴文氏らがフィーチャーされていた時期であり、1円起業もできるようになったタイミング。「当時は医療訴訟も相次ぎ、一般の方の医師・医療への不信感が大きくなっている時期でした。そんな空気を臨床以外の形で変えたい。そう考え、医師としての社会貢献のあり方を模索していた。医系技官も選択肢の1つとして考えたのですが、官から変えるというのでなく、民間の立場からチャレンジしようと思い至りました」。

佐竹氏は、留学が契機になったと振り返る。「ジョンズホプキンス大学公衆衛生大学院にて医療インフォマティクスの研究をしていました。その際、教官から薦められたのがソフトウェアを使った治療の論文で、非常に大きな衝撃を受けたのを覚えています。ソフトウェアを使って治療効果のエビデンスが出ていたのですから。これからは、薬、医療機器で治すだけでなく、ソフトウェアやアプリという全く新しいツールで治療する時代がくる。そう確信し、それを日本で実現させたいと思いました」。

自らが直面した課題を解決するために起業を選んだというのは、中山氏。「何でも診られる医師になりたく、地方の病院で総合診療を学んでいました。そんな中でまずは“骨折”を診れないととの思いが強くなり、3年整形外科で研修したのですが、そうしたら骨折しか診られなくなっていたんです。糖尿病など薬もどんどん新しくなっているのに知識のアップデートは追いつかない。そんな中、医師同士で質問しあって知識を補完し合うことができるサービスがあれば・・・とビジネス化を考えました」。

松村氏は、心療内科医として発達障害の方のキャリアを支援するプログラミングスクールの立ち上げに参加した中で、VRデザイナーと出会ったことが起業に繋がった。「心療内科は心身医学がベース。歯科もそうなんですよね。日本では、歯科と医科が一緒になることも少ない。そこの連携も築きたいと思いました」。

シリコンバレーで囁かれる都市伝説とは!?

シリコンバレー在住のベンチャーキャピタリストでもある池野氏からは、「シリコンバレーでは、メディカルドクター、つまり、患者を診ている医師に投資するのは絶対ダメと言われている」というドキッとする発言も。アーリーステージはいいが、スケーリングアップしなければならない段階では、MBAホルダーや企業にいた経験がないとVCからは敬遠されると指摘した。「引退しなきゃかな」と思わず漏らしたのは石見氏。「人、売上、サービス開発と様々あるが、究極的には人の課題が一番大きい。組織の人数でいくと、10人まで、30~50人まで、100人以上、1000人以上であり方変わってくる。今、30~50人の段階に戻れるのなら、もっと伸びるやり方ができたのではないかと思う」と経営者としての苦労を振り返った。

佐竹氏も「ベンチャー30人の壁とよく言われるが、ちょうど今しみじみ感じている」と吐露。「数人なら阿吽の呼吸で一緒の方向に進める。しかし、増えるとそうはいかない。そこで、ビジネスサイドの人材やテクノロジー、薬事など自分たちが持っていないスキルの人材を入れて試行錯誤しているところだ」。

新米起業家医師の中山氏は、「今はまだ医者のリアルコミュニティを作っている段階で、参加ドクターは約1,000人。今は参加ドクターの信頼を得ることに重点を置いているが、投資家からは、週2で臨床もやるこのフェーズはいつまで続くのか?と問われている」と吐露。池野氏からは、「経営ができる優秀なパートナーをつけられるといいのではないか。DtoDをやっていくのであれば、臨床現場を抜けるのは得策ではない」とのアドバイスがあった。

中山氏のいう「信頼感醸成」については、松村氏も同様の思いを抱えているとか。「企業の中ならもっと先に進んだのに…と思うこともあります」。池野氏からは、リクルートで培った突破力、巻き込み力を期待する言葉があった。

ちなみに、池野氏が起業家医師たちを震え上がらせた「シリコンバレーの法則」にはオチがある。「メディカルドクターをしていてエグジットしたら、次も絶対に成功するといわれている。つまり、シリアルアントレプレナーになる可能性を秘めている」のだとか。また、医師がエンジェルで入っている場合も成功するという都市伝説も囁かれているという。

医師会、学会との関係性構築も

さらには、起業家医師がビジネスを進めていく中で、医師会や学会との関係性を重視していく重要性も指摘された。その際、池野氏からは「お互いに科学者だから科学データ、エビデンスで語れるところはアドバンテージとして生かすべきだ」との助言もあった。
既に治療アプリの治験を進めている佐竹氏からは「学会の先生ともアライアンス取りながら進めている。学会の先生からも価値を感じていただけて、同志のように動けている」と協働の動きが紹介された。

池野氏は、「薬事承認が取れたとしても、保険償還が曲者」と指摘。「10円なのか1000円なのかで全然インパクトが異なり、会社経営に響いてくる。遠隔医療は、数年前までふざけんな、なにいってんだとう空気だったが、今は間違いなく進んでいる。ニーズも先行している。誰が意見を上申するか。それは、医師であり、患者を知ってて事業をやりサービスを提供している者たちだ。それが一番インパクトある。日本の制度を変えるという意味でも社会に対して責任がある」と期待と発破がかけられた。

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