夢の現実化が見えてきた! 「再生腎臓を最速で患者に届ける」 日本唯一のオープンイノベーション

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2018.01.04 Thu.  木原洋美

腎臓再生――もうすぐ不可能が可能になる!

「腎臓再生の研究は、臨床応用に向けた最終段階に入りました」

2017年11月22日、厚生労働省で開かれた記者会見の場で、東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科の横尾隆主任教授は、集まった報道陣を前にそう切り出した。

記者会見を行う横尾隆主任教授

翌23日、教授らのチームが、胎児の体内で行われている臓器の発生プログラムを活用し、腎臓を再生させることにラットで初めて成功したことが、英科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』で発表されるというのだ。人間と比べ、かなり小ぶりではあるものの、再生された腎臓は、尿を生成するなど腎臓としての機能を完全に備えているといい、ヒトへの臨床応用が一気に現実味を帯びてきたことになる。

慢性腎臓病は、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病によって発症リスクが高まることから「新たな国民病」と呼ばれている。病状が進行し、末期腎不全になると、老廃物を十分に排出できなくなり、体内に毒素が蓄積する。生きていくためには、「人工透析」「腎移植」のいずれかの腎代替療法が必要となるが、両者はいずれも完璧ではない。

透析では、腎臓の働きの全部を代行することはできないし、合併症も起きる。一方腎移植は、根治が望めるが、腎臓の提供者自体少ないという大問題を抱えている。日本には現在、約33万人の透析患者がおり、週3回、1回4時間の治療を受けている。1級障害者に認定されるため医療費は月1~2万円で済むが、離職し、生活保護を受ける人もいる。食事や生活は制限され、QOL(生活の質)も低下する。透析患者のうち献腎による移植を希望する人は1万人以上いるが、ドナーが圧倒的に少ないため、希望が叶わない患者は多い

人口あたりの患者数は世界一。さらに、透析関連医療費は1人当たり年間約500万円を超え、国民医療費約40兆円のうち、約1.4兆円が人工透析に費やされているのが日本の現状だ。

一方世界に目を転じると、少なくとも228 万人を超える腎不全患者が透析や移植を受けることができないまま死亡している。その数は特にアジアやアフリカの低所得層の多い国に偏っていると報告されている。国の貧富の差が、そのまま生死を左右する現状は、大きな国際問題といっていい。

「患者さんに『腎臓再生』という新たな治療の選択肢を届けることは、人工透析大国・日本の責任です。一刻でも早く届けたい」(横尾氏)

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